公演再開に希望を託す劇場関係者にはショックだろう。東京都新宿区の劇場で上演された舞台公演で、出演者や観客らが新型コロナウイルスに集団感染した。

 主催者によると、感染者は59人に上る。観客は東京以外からも集まり、感染は群馬や栃木、長野、愛知などの各県に広がっている。6月30日から6日間、12公演の全観客約800人が濃厚接触者だ。

 大勢が参集する劇場やホールなどでの屋内感染は、規模が大きくなりやすい。2月から大阪のライブハウスで相次いだ集団感染は、16都道府県の83人に及んだことを忘れてはいけない。

 東京では先月から感染拡大が見られ、連日200人超の感染者が出て警戒度は最高レベルに引き上げられた。そうした中での集団感染である。劇場や主催者の責任は重いと言わざるを得ない。

 全国で公演が再開される一方で、感染拡大の傾向が見られる。今回の集団感染から課題を引き出し、対策の見直しや公演可否の判断などに役立てる必要があろう。

 同劇場や主催者は感染対策として、観客にマスク着用、検温を求め、劇場側も入場を定員の半数程度にし換気に努めるとしていた。しかし、同劇場が加盟する「小劇場協議会」(東京)は、感染防止のガイドラインが徹底順守されていなかったとしている。

 出演者2人が体調不良を申告していたという。主催者は検温や抗体検査で問題なかったと説明するが、詳しい検証が必要だ。代役を立てる難しさや施設の限界など、ガイドラインを守れない事情があるのなら明らかにしてほしい。改善策を劇場に携わる人たちで考えることができる。

 小さな劇場にとって公演中止は死活問題だろう。出演者やスタッフの生活もかかっている。公的支援が用意されたが、十分とは言えまい。といって感染の疑いがあるのに公演を強行すれば、多くの支持を失うと肝に銘じてほしい。

 ロームシアター京都やびわ湖ホールなどでも公演再開の運びとなり、会場を小ホールから大ホールに移して観客の間隔をあけるなどの工夫をしている。

 政府は8月1日から観客人数の上限をなくす方針だ。感染対策を徹底するには人的配置を十分にし、観客の協力も欠かせない。

 業種別に作成されたガイドラインは151に上る。ただし守られているかは、今回の集団感染をみると心もとない。実際に役立つよう不断の改善が必要ではないか。