今夏は定員を半数程度に減らして営業する槍ケ岳山荘(2019年9月、長野・岐阜県境付近)

今夏は定員を半数程度に減らして営業する槍ケ岳山荘(2019年9月、長野・岐阜県境付近)

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で今夏、日本アルプスなど全国主要山岳の山小屋240軒のうち約4割に当たる95軒が休業することが17日までに京都新聞社の取材で分かった。営業の判断をした山小屋も、ほぼ全てが「完全予約制」で宿泊者の定員を大幅に減らす予定で、夏から秋にかけての登山環境は一変する。

 北海道から九州の主要山岳地域の山小屋や地元自治体などに問い合わせたり、公式ホームページで確認したりして状況を集計した。

 南アルプス(山梨、長野、静岡)は約8割の山小屋が休業を決めた。登山口へのバスも運休する路線があり、大幅に登山者は減少しそうだ。富士山(山梨、静岡)は登山道が閉鎖されており、全ての山小屋が休業する。

 北アルプス(長野、富山、岐阜)は2割弱が休業する。槍ケ岳や穂高岳、立山など人気エリアで多くの山小屋が営業するが、山中の天然温泉で知られる白馬鑓温泉小屋などが休業する。八ケ岳(長野、山梨)や中央アルプス(長野)などでも一部の山小屋が開かれない。

■登山スタイル、大きく変わらざるを得ない

 多くの山小屋は従来、事前予約のない飛び込みの登山者も受け入れ、緊急避難所としての役割も担ってきた。しかし、今年はほぼ全ての山小屋が「完全予約制」を導入し、3密(密閉、密集、密接)を避けるため定員を2~5割程度に設定している。利用できないテント場も多く、どの山域も受け入れ人数が大幅に減少する。

 また、ほぼ全ての山小屋がマスクや消毒液の持参を求め、寝具からの感染を避けるため寝袋やインナーシーツなどを必須とする小屋も多い。

 医療体制にも影響が出ている。白山室堂(石川)や常念小屋(長野)などの診療所が今夏は開かれないなど、休止・縮小する山岳診療所もあり、例年通りには登山者の急病や事故に対応できない。

 日本山岳・スポーツクライミング協会の尾形好雄専務理事は「夏の山小屋は3密の最たるもので、休止や縮小は仕方ない」とし「山小屋の経営は危機に陥ると予想され、大人数ツアーのような山行も厳しくなる。コロナを機に、今後の登山の形は大きく変わらざるを得ないだろう」と話す。

■定員大幅減で経営危機 CFで支援の動きも

 人気山岳エリアの山小屋は夏から秋にかけての休日は登山客が集中し、1畳に2人で寝ることも珍しくない。こうした「かき入れ時」の収入が山小屋経営を支えてきた面がある。しかし今夏は定員を大幅に絞らざるを得ず、経営に大きな影響が出そうだ。

 日本最大級の山小屋の白馬山荘(長野)は定員を800人から300人に減らす。運営会社の白馬館(同)は「人件費とヘリコプターで食料などを輸送する荷上げ代が常にかかり、定員減は非常に痛手」と頭を抱える。槍ケ岳(長野、岐阜)の山頂付近に立つ槍ケ岳山荘は定員を半数程度にするといい「もし来年以降も宿泊人数を絞る状況が続けば、多くの山小屋が存続できなくなるかもしれない」と危機感をにじませる。複数の山小屋が従来1泊1万円前後だった宿泊料を千円程度値上げすることを決めている。

 また多くの山小屋は登山者を泊めるだけでなく、登山道整備や遭難者救助などにも関わってきた。穂高岳にある涸沢小屋(長野)は「持ち出しで道の整備や救助対応もしていたが、現状では手が回らなくなる」と話す。

 こうした山小屋を支援するため、山岳系出版社「山と渓谷社」や長野県などが、ネット上で広く資金提供を募るクラウドファンディング(CF)を実施している。登山用地図アプリ制作会社「ヤマップ」のCFには6月末までに約6100万円が集まったという。