大吉山展望台から事件現場の方向に向かって黙とうするファン(18日午前10時31分、宇治市宇治)

大吉山展望台から事件現場の方向に向かって黙とうするファン(18日午前10時31分、宇治市宇治)

 36人もの命が奪われた京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件は18日、発生から1年を迎えた。京アニのアニメシリーズや映画にゆかりの深い「聖地」では、この1年、犠牲になった社員をしのび、作品に感謝するファンの姿が絶えることはなかった。事件発生時刻の午前10時半、それぞれの聖地で人々は静かに祈りをささげた。

 京アニの本社がある京都府宇治市。吹奏楽に青春をかける高校生の成長を描いた「響け!ユーフォニアム」(2015年から放送)の舞台にもなり、ファンは市内にいくつもある「響け!-」の聖地を訪れる。

 聖地の一つで、作品の象徴的な場面に使われてきた大吉山展望台。この日もファンら数人が足を運び、作品に登場する風景を写真に収めたり、ベンチに座って静かに祈ったりしていた。兵庫県から訪れた男性会社員(24)は「『響け!―』の登場人物や製作したスタッフの頑張る姿に励まされてきた。作品ゆかりの場所で冥福を祈りたい」と話した。

 「あの日を忘れまい」。宇治市ではさまざまな取り組みが続いている。市中央図書館は発生1年に合わせて15日から「響け!-」のポスターや原作本の展示を始めた。「事件のことを決して忘れず、今後の活躍を願いたい」と安田美樹館長。職員が作った折り鶴も飾り、犠牲者を哀悼する。

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 「たまこまーけっと」(13年から放送)や「たまこラブストーリー」(14年公開)の舞台のモデルとなった出町桝形商店街(京都市上京区)は、この日の朝も買い物客が行き交い、店員の売り声が響く、いつもの光景があった。

 当初はアーケードに長文の追悼メッセージを掲げ、義援金も募ったが、徐々に日常に戻っていった。「京アニさんも日常の商店街の空気に引かれて、モデルに選んでくれた」と鋸屋(おがや)愼三理事長。いつも通りの姿でいることが京アニに心を寄せることになると信じる。

 一部の店員たちはこの日も、息長く応援する思いをかたちにした缶バッジを身に着けた。作中の商店街の看板に記されていたキャッチコピー「いつもあなたのそばにある」のメッセージがあしらわれている。この言葉は作中に登場したことでファンが出町桝形商店街に働き掛け、現実でも看板に使われるようになった。商店街と京アニとのつながりを象徴する言葉だ。

 「たまこ―」のキャラクターがあしらわれたTシャツ姿で店に立った鮮魚店店主の男性(74)は「この1年でたくさんのファンが商店街を訪れ、交流させてもらった。今後も京アニを応援していきたい」と語った。

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 自由奔放な主人公と仲間の学園生活を描いた「涼宮ハルヒの憂鬱(ゆううつ)」(06年から放送)で舞台となった兵庫県西宮市の喫茶店「珈琲屋ドリーム」。午前8時の開店とともにファンらが訪れ、京アニや犠牲者らに思いをはせた。

 作品は京アニの名を国内外に知らしめた。製作の過程でスタッフが店へロケハンに訪れ、「天井のほこりの跡までなめるように撮影していった」(店主の女性)。放送を機に店へ集うようになったファンらが、作中に登場する市内のスポットを発信し、「聖地巡礼」の動きを引っ張ってきた。

 15年以上の京アニファンという男性会社員(48)=同市=は、来店前に自宅で京都の方角に向けて黙とうした。「亡くなった方の無念を考え、魂が救われるように祈った。今後も作品を見たりグッズを買ったりして京アニを応援し続けたい」と語った。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で遠方のファンは減ったが、近くに住むファンたちは定期的に足を運んでいるという。「珈琲屋ドリーム」の店主は「この1年はあっという間だったけど、京アニさんの復活はこれから。頑張ってほしい」と話した。