大阪地裁での同性婚訴訟に臨む麻智さん(右)とテレサさん=2020年2月7日、大阪市北区

大阪地裁での同性婚訴訟に臨む麻智さん(右)とテレサさん=2020年2月7日、大阪市北区

8年前に友人から麻智さんの誕生日プレゼントとして贈られたダーツボード

8年前に友人から麻智さんの誕生日プレゼントとして贈られたダーツボード

2人の左手薬指には結婚指輪が光る

2人の左手薬指には結婚指輪が光る

 誰もが愛する人と結婚できる社会を実現すると誓い合う女性同士のカップルが、京都市内に暮らしている。坂田麻智さん(41)とテレサ・スティーガーさん(37)。国を相手に同性婚を認めるよう求める大阪地裁訴訟の原告だ。2人は、わが身をさらしてでも司法の場に訴え出た。駆り立てたのは、性的マイノリティーであるが故に心労を募らせ自死を選んだ友人と、娘の愛のあり方を受け入れきれずに苦悩する母の姿だった。

■麻智さんにプレゼントを渡した直後、友人は自死を選んだ

 麻智さんとテレサさんが2人で暮らす京都市下京区の町家の荷物部屋に、友人から贈られたダーツボードが眠る。「最近は遊んでない。苦しいときの友人を思い出してしまうから」。麻智さんがつぶやいた。

 「麻智さん、遅くなってごめん。お誕生日おめでとう」。2012年1月30日夜10時ごろ、近くに住む当時25歳の友人が自宅を訪れ、プレゼントのダーツボードを手渡してくれた。友人はしばらく話をして帰途に就いた。6時間後、自ら命を絶った。

 麻智さんと友人は性的マイノリティーが集まるパレードで知り合った。友人は生まれた性は女性だが、性自認は女性でも男性でもない「Xジェンダー」に近かった。親に理解されず、「あんたは何もできない」と言われ、自立して生きる自信を奪われていた。性的マイノリティーの研究をするために入った大学院でも、教員から「なんでそんな研究するの」と心ない言葉を投げられた。自殺未遂を繰り返し、同居する交際相手の女性が夜も寝ずに見守っていた。

 「友人には死の選択肢しかなかったのかもしれない」と麻智さんは声を振り絞る。愛する対象や性自認に悩んでいた友人にとって、社会に居場所がなかった。なぜ私たちが苦しい目に遭わないといけないのか。悲しみ以上に悔しさと社会への怒りがこみ上げた。大切な人の死に、泣くことすらできなかった。

■「同性婚を認めないのは違憲」裁判で思いを訴えた

 麻智さんとテレサさんは昨年2月、同性同士の婚姻を認めないのは違憲だとして、国を相手に大阪地裁へ提訴した。麻智さんは意見陳述で裁判長に訴えた。

 「家族にさえカムアウトできなかったり、職場や学校に理解者がいなかったり。命を絶った友人もいました。もし平等な社会であれば、誰もこのような悩みを抱える必要はありません。もうこれ以上、私たちを『いないこと』にしないでください」

 偏見を恐れて顔や名前を明かして闘えない人、苦悩の末に亡くなった人のために臨む裁判。「誰かに任せきりでは永遠に変わらない。私たちが声を上げ、国の制度を変えるしかない」。2人は心に誓う。