試行とはいえ、最高速度120キロでの走行に危険性はないのか。

 警察庁は試験的に最高速度を110キロ(法定速度は100キロ)としている東北自動車道、新東名高速道路の2区間について、3月1日から120キロに引き上げる。

 実勢速度と規制速度の差を埋めて交通の効率化を図る狙いだという。1年間試行し、120キロを継続できるか、他の路線などにも適用可能かを検討するとしている。

 専門家や省庁幹部らでつくる懇談会の提言を受けた。ただ、法定速度を引き上げれば事故のリスクも増大する。安全確保が大前提であることを忘れてはならない。

 高速道路を法定速度を超えるスピードで走行する車は多い。警察庁によると、2区間の110キロ試行前の実勢速度は110キロ台前半~120キロ台前半だった。

 「違反」といえる速度での走行が常態化しているのが現状だ。

 ドライバーの中には120キロ化を求める声も少なくない。海外では130キロまで認める国も多い。

 だが、高速走行ではわずかな運転ミスが大きな事故に結びつきやすく、被害も大きくなる-と2018年版の交通安全白書は記す。高速道路での死亡率は、一般道路の2倍以上にもなっている。

 今回の120キロ試行では、トラックなど大型貨物車は対象外で80キロ規制のままだ。車両ごとの速度差が拡大すると予想される。

 一般車も含め、120キロの流れに乗り切れない車両は、追い越し車線に出ることが難しくなる。

 「速度格差」があおり運転などのトラブルを招いたり、安全運転に努めるドライバーを迷惑視する風潮につながったりしないだろうか。120キロを超えて走行する新たな「違反」も生まれかねない。

 警察庁によると、2区間での110キロ試行で、実勢速度は試行前とほぼ変わらず、死傷事故は新東名が計14件から計8件に、東北道は4件から2件に減ったという。

 それが120キロ試行の根拠の一つではあるが、事故がなくなったのでないことには注意したい。

 懇談会の提言でも、初心運転者の半数以上が実勢速度の変化や車両間の速度差に不安を感じていることに留意が必要-と指摘する。高齢ドライバーの増加で同様の不安を持つ人は多くなりそうだ。

 高速道路のさらなる高速化が、交通安全の基本である「譲り合いの精神」をないがしろにしないよう、ドライバーは心しなければならない。警察当局も啓発や指導に力を入れてほしい。