イラスト・冨田望由

イラスト・冨田望由

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 前回は、動物のおなかの中を生き物が通り抜ける話でした。このようなことが起こるのは、多くの動物の体が、突き詰めていえば1本の管だからです。管の前に開いている穴が口で、後ろにあるのが肛門。この二つの間をエサが流れる、というのが「食べる」ときに起こっていることです。

 ですが、生き物の世界は多様性がルール。どんなことにも例外があります。今回の場合は、管が通っていない動物がいるということで、その一つが、クラゲの仲間です。この動物たちがエサを食べるときに使うのは管ではなく、袋です。体の外とは一つの穴だけでつながっています。この穴からエサを体の中に取り込んで、同じ穴からふんを捨てます。つまり口が肛門を兼ねているわけです。

 さて、クラゲ、と一言で書いてしまいましたが、大きく分けると二つのグループがあります。一つはお盆すぎに海で泳いでいると刺してくる、いわゆるクラゲです。もう一つはクシクラゲ。名前にクラゲとついていますが、普通のクラゲと違う生き物で、体に管が通っており、口と反対側に肛門があります。ここに穴があることは19世紀からわかっていたのですが、クシクラゲにエサを与えると普通のクラゲのように口から吐き出すので、この穴は肛門ではないと思われてきました。ところがこれは与えるエサの量が多すぎたためらしく(100年以上誰もこのことに気がつきませんでした!)、少しずつ与えると口と反対側の穴からちゃんと排せつすることをマイアミ大のウィリアム・ブラウンさんたちが見つけました。

 胃袋という言葉がありますが、例えば人間の胃は口から肛門までつながる管の中で他より大きく広がっている部分のことです。ですから、これを胃袋というのは厳密には正しくありません。胃袋という言葉は、クラゲにこそふさわしいものなのです。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。