犯行当時の精神状態を調べるため鑑定留置されている青葉容疑者

犯行当時の精神状態を調べるため鑑定留置されている青葉容疑者

 京都アニメーション第1スタジオ(京都市伏見区)の放火殺人事件で、殺人容疑などで逮捕された青葉真司容疑者(42)は現在、刑事責任能力を調べるために鑑定留置されている。精神鑑定は起訴の可否や公判の量刑を大きく左右するが、実は明確な判定基準がなく、担当医によって結果が異なるケースも少なくない。精神科医らでつくる学会は鑑定手法を共有するための取り組みを進めている。

 刑法39条では、責任能力のない「心神喪失」は罪に問わず、著しく低い「心神耗弱」なら刑を減軽すると定める。犯罪白書によると、1989~2018年の30年間、心神喪失で一審無罪となった被告は毎年0~11人だった。

 精神科医の五十嵐禎人・千葉大教授によると、精神鑑定では(1)精神障害の有無と程度(2)精神障害が犯行に与えた影響―が主なポイントになる。本人との面接(問診)、性格や知能を把握するための心理テスト、脳波や血液検査、家族らへの聞き取り、捜査資料の分析などを通じて、総合的に評価していく。

 ただ、五十嵐教授は「国内では判定の目安が確立されていない」と話す。医師の経験や能力、考え方によって鑑定結果にばらつきが生じ、起訴前と公判段階での結果が正反対になることもある。実際に、88~89年の幼女連続誘拐殺人事件では宮崎勤元死刑囚を複数の医師が精神鑑定し、結果は3パターンに割れた。

 こうした経過を踏まえ、日本司法精神医学会(東京)は2014年に「学会認定精神鑑定医制度」を始めた。鑑定の手法や要点をある程度統一することで鑑定の精度を高める狙いだ。ワークショップや検討会を年1回ずつ開き、医師同士で意見交換したり、裁判官を招いて公判での判断の在り方を学んだりしている。参加する医師は少しずつ増え、人材確保にもつながっているという。

 裁判員制度が導入され、市民が刑事責任能力を判断するようになり、「より分かりやすい精神鑑定が求められるようになった」(五十嵐教授)。どのような精神障害がどう影響しているのか、鑑定医が具体的に説明する傾向が強まったことで、公判に与える影響も大きくなったという。

 京アニ事件の青葉容疑者は37歳の時に精神疾患と診断されたとされる。「小説を盗用された」と不可解な動機を主張する一方で、「ガソリンを使えば多くの人を殺害できると思った」と殺意や計画性をうかがわせる供述もしており、犯行当時の精神状態が今後の焦点になる。

 犠牲者数の多さから、青葉容疑者が起訴されれば裁判員裁判で検察側が死刑求刑することも想定される。刑事責任能力の有無は最大の争点になるだろう。なぜ事件が起きたのか、真相を解明する上でも厳格な精神鑑定が行われることを期待したい。