日米欧の先進7カ国(G7)が中央銀行によるデジタル通貨(CBDC)の発行で連携する方針を固めた。

 8月末から9月上旬で開催が調整される米国での首脳会議(G7サミット)で取り上げ、実用化に向けて各国の知見などを共有するという。

 だが、発行には乗り越えるべき多くの課題がある。利便性だけでなく、問題点への十分な精査が欠かせない。

 G7の連携の背景には、デジタル通貨研究で先行する中国の存在がある。

 既に広東省深圳市など5カ所で試験運用に着手し、2022年の北京冬季五輪までに発行する方針とされる。

 仮に中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」を通じて、東南アジアやアフリカで「デジタル人民元」の存在感が高まれば、世界の基軸通貨であるドルに取って代わる可能性がある。

 そうなれば、香港問題などで米国が中国の金融機関を念頭にドル取引の制限をちらつかせているような制裁も、実効性は弱まらざるをえない。

 中国の動きは多分に「通貨覇権」争いの様相を帯びており、G7として対応を迫られていた。

 加えて、米交流サイト大手・フェイスブックが発行を計画する「リブラ」など民間のデジタル通貨の動向もある。

 普及すれば、通貨供給量を調整して物価を安定させる金融政策などを進めにくくなるため、中銀としては、民間に主導権を握られる前に発行態勢を整えておきたいところだろう。

 世界的に通貨のデジタル化の流れが加速する中、日銀は既に実証実験を進める方針を示し、欧州中央銀行(ECB)をはじめ五つの中銀などと共同で研究するグループも設立している。

 CBDCは民間のデジタル通貨より信用力が総じて高く、現金流通のためのコストを減らす効果が期待できるとされる。

 だが、送金や決済のデータを通じて個人の消費行動などの情報を国家が握ることや、マネーロンダリング(資金洗浄)への悪用など懸念材料も多い。

 民間銀行への影響、さらにスマートフォンなどの端末を使いこなせない高齢者ら「デジタル弱者」への対応にも目配りが必要だ。

 CBDCの検討に当たり、日銀は、まずは国民が安心して使える将来の通貨のあり方をきちんと議論してもらいたい。