国民の不安は収まらず、現場の混乱は広がっている。明らかな準備不足の中での見切り発車だ。

 政府の新型コロナウイルス対策の観光支援事業「Go To トラベル」が、きょう22日からスタートした。

 事業を巡っては、外部への事務委託先公募をやり直したり、開始直前に東京発着の旅行を除外したりと対応が迷走した。

 さらに東京分のキャンセル料について、政府は当初の方針を転換して補償すると表明したが、詳細は未定としている。

 高齢者や若者の団体旅行についても控えるよう求めているが、ツアー実施は事業者判断に委ねられている。

 政府の方針が二転三転し、振り回された現場から悲鳴が上がっている。あまりにも場当たり的で、見通しが甘すぎると言わざるをえない。

 こんなことで肝心の感染防止対策が十分できるのか心配だ。

 今回分を含む「Go To キャンペーン」は4月末に成立した第1次補正予算に計上された。そもそも感染収束後の経済支援策として閣議決定されたものだ。

 8月上旬から始める予定だったが、7月下旬の4連休を控え観光分が前倒しされ、感染再拡大のタイミングと重なった。

 経済活動の再開に前のめりになり、状況を楽観視したことが今の混乱を招いたと言える。

 共同通信社の全国世論調査によると、「Go To トラベル」で東京を除外した政府対応について「全面延期すべきだった」との回答が62・7%に上った。

 事業で感染が拡大するとの懸念が根強いことが浮き彫りになった。こんな状況で取り組んでも観光振興にどれだけ効果があるのか疑問が残る。

 感染は東京以外の首都圏、関西圏などでも拡大しており、収まる気配はない。

 さらに事態が悪化した場合はすみやかに立ち止まり、事業の中断をためらわない姿勢が最低限求められよう。

 「第2波」への不安が増す中、安倍晋三首相は国民へ感染防止を呼び掛けることもなく、とても指導力を発揮しているとは言いがたい。

 政府のコロナ対策では、特別定額給付金を巡っても当初案を撤回するなど混乱が続いた。不手際が目に余る。

 観光振興より先に第1波での対策を検証し、感染封じ込めのための戦略を立て直すべきだ。