昨年の「お千度」。おそろいの浴衣姿で芸舞妓たちが参拝に訪れた(2019年7月4日、京都市東山区・八坂神社)

昨年の「お千度」。おそろいの浴衣姿で芸舞妓たちが参拝に訪れた(2019年7月4日、京都市東山区・八坂神社)

今年は新型コロナを受けて「お千度」は中止に。境内は閑散としていた(7月7日午前、京都市東山区・八坂神社)

今年は新型コロナを受けて「お千度」は中止に。境内は閑散としていた(7月7日午前、京都市東山区・八坂神社)

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、京都の五花街で年中行事の中止が続いている。舞踊公演のような大きなイベントにとどまらず、芸事のまちならではの恒例行事も開催が見送られ、独自の歳時記の中で生きる花街に影を落としている。直接的な損失につながる催しもあり、関係者を悩ませている。

 今月7日の八坂神社(京都市東山区)。例年なら揃いの浴衣姿の芸舞妓で華やぐ境内も静まり、人影はまばらなままだった。祇園甲部(同区)の芸舞妓が、芸事の上達と夏場の息災を願う「お千度」は、新型コロナの影響で中止された。
 京舞井上流の門下生でつくる「みやび会」の恒例行事だが、今年は家元の井上八千代さんら数人が、個人的に参拝した。八千代さんは「いつもの(芸事上達の)祝詞(のりと)に加えて、疫病退散の祝詞も上げていただいた」と、事態の早期収束を願っていた。
 夏の行事では、8月1日に芸舞妓が世話になったお茶屋などをあいさつして回る「八朔(はっさく)」がある。こちらも各花街で正式に中止を決めたり、舞妓が所属する置屋、芸妓個人に一任したりするなど、例年とは違った対応を決めている。
 花街の1年は、芸事を巡る独自の行事をこなしながら進んでいく。年の瀬に芸事の師匠宅にあいさつに訪れる「事始め」(12月13日)や、年初めの「始業式」(1月7、9日)といった関係者のみが出席するものも、全国ニュースでも報道されるなど、京都のまちの個性として存在感を放つ。
 いずれのイベントも、たとえ内輪のものであっても、芸舞妓がまちに繰り出す機会だけに、その姿を目当てに、沿道や会場の周辺には、大勢の観光客や写真愛好家が詰めかける。芸舞妓のみならず、ファンたちの「密」は避けられず、各花街は対応を求められることになる。
 「健康、安全への対策が万全にはかなわない」「十分な感染予防はできない」-。催しの中止のたびに、各花街から出されるコメントには、苦渋の決断が見て取れる。
 また、収益事業への影響はより直接的だ。上七軒(上京区)が歌舞練場で開く恒例のビアガーデンは、芸舞妓のもてなしを気軽に受けられる場として、例年約1万人が利用する人気行事だが、今夏は中止となった。
 収益は春の舞踊公演「北野をどり」の舞台制作にも活用される。「今年は東京五輪にちなんだ新作を上演予定だった。そのまま翌年に上演できるかは不透明」と上七軒歌舞会。制作費の増加も予想されるだけに気をもんでいる。