欧州連合(EU)の結束を、何とかつなぎとめたようにみえる。

 新型コロナウイルス流行で打撃を受けた欧州経済の立て直しへ、「復興基金」創設で合意した。

 事実上の共同債を大量発行して資金を調達する初の試みも行う。

 コロナ禍の損害は国により異なる。それを全ての加盟国が共同で担う方法が了承されたことで、EUの連帯をアピールした形だ。

 ただ、基金創設に向けた合意形成は難航し、会議は90時間にも及んだ。異なる利害を調整し、妥協を重ねた結果ともいえる。

 基金創設で各国は経済再生を本格化させるが、感染は収束しておらず、第2波の懸念もある。想定通りにいくかどうかは未知数だ。

 基金規模は7500億ユーロ(約92兆円)で、経済のデジタル化や気候変動対策などに重点投資する。

 各国の立場の違いが鮮明になったのは、支援を必要とする国々に対する基金の拠出形態だった。

 被害が大きかったイタリアやスペインは返す必要のない補助金の形を求めた。これに対して健全財政を重視するオランダやオーストリアなどは融資を主張した。

 イタリアなど南欧諸国は財政規律が緩く、こうした国々の負担を共有することへの異論といえる。

 共同債を巡っても、信用力の高い国が南欧諸国の借金を背負う形になるため、ドイツのメルケル首相は当初、否定的だった。

 だが最終的に、基金は補助金に充てる部分を減額して融資部分を増やす形で折り合い、共同債についてはメルケル氏も同意した。

 コロナ禍による厳しい経済状況のイタリアなどを支えることで、EU全体の信用力を維持する狙いも読み取れる。ただそれ以上に、EUの団結を再確認する必要もあったのではないか。

 イタリアでコロナ禍が深刻化した際、多くの加盟国は国境を閉鎖し、物資を囲い込んだ。見透かすかのように、中国やロシアが医療機器を送るなどの支援を進めた。

 EUの結束が揺らいでいることが浮き彫りになった。手をこまねいていては存在感がさらに低下するとの危機意識も感じられる。

 EUでは、ハンガリーなど東欧諸国の民主主義を軽んじる姿勢が求心力の低下に拍車をかけているとも指摘されている。

 復興基金の合意は、欧州が同じ価値観で行動できる存在であることを改めて国際社会に知らしめる効果を生んだともいえる。欧州の結束が世界経済の安定に及ぼす影響を注視したい。