医師の大久保容疑者(7月23日、京都駅)

医師の大久保容疑者(7月23日、京都駅)

 医師が面識のない難病患者から頼まれて薬物を投与し、殺害したとされる事件が23日、発覚した。嘱託殺人の容疑で京都府警に逮捕された大久保愉一容疑者(42)と山本直樹容疑者(43)。亡くなった女性と、大久保容疑者とみられる人物が「安楽死」の密約を交わしたのは、会員制交流サイト(SNS)だった。「自然な最期まで導きます」「よろしくお願いします」。インターネット空間に残る生々しいやりとりからは、死へ誘導するかのような意図がうかがえる。


 SNS上で大久保容疑者とみられる医師と筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者の女性=当時(51)=の接点が初めて確認できるのは2018年12月だ。安楽死を巡る第三者の投稿に対し、ハンドルネームで互いにメッセージを書き込んでいた。


 「私たち、神経難病の患者も壊れていく体と心、来るべき死の苦しみの恐怖と日々戦っています 紙一重を超えるには何が必要なのでしょう?」とALSの女性。これに対し、医師が「『脳死移植は殺人だ』とか過去の例みたいに、当事者でない外野がかきまわすので、それを封じる手だてが必要です」と応じていた。


 医師が約1週間後、安楽死に触れて「作業はシンプルです。訴追されないならお手伝いしたいのですが」と水を向けると、やりとりはエスカレートしていく。体を弱らせる方法、死ぬための計画、患者の意思表示と治療の関係…。難病で思い悩む女性に医師は助言を重ね、昨年8月には、「なんなら当院にうつりますか? 自然な最期まで導きますが」と迫る。ALS女性の返答は「ありがとうございます 決意したらよろしくお願いします」だった。


 このやりとりが交わされてから約3カ月後の昨年11月30日。大久保、山本両容疑者とみられる男2人が京都の女性宅マンションを訪れた。24時間態勢で介護するヘルパーが席を外し、3人だけの「密室」になる。男らが部屋を出た後に女性の容体が急変し、病院搬送されたが死亡した。司法解剖の結果、女性の遺体からは普段服用していない薬物が検出され、京都府警が捜査を始めた。

 捜査幹部は言う。「われわれは安楽死と考えていない。容疑者は主治医ではなく、金銭も渡っていた。これは明らかな嘱託殺人事件だ」