身近にありながら、見落とされがちなのが農業用ため池の防災だ。九州を中心に大きな被害をもたらした今月上旬の豪雨でも、ため池の決壊や損壊が報告されている。

 老朽化し管理が行き届かなくなった池の増加は、京都府、滋賀県でも人ごとでない。堤が崩れたり流木が堆積したりしていないか。ためた水を安全に流下させられるか。利用する農家や水利組合には念入りにチェックしてもらいたい。

 農業用ため池管理保全法の施行から今月で1年になる。6府県計32カ所の池が決壊した2018年の西日本豪雨を教訓に、ため池の持ち主には所在地や総貯水量を都道府県に届け出ることが義務づけられた。民家に近く、人命にかかわる恐れのある場合は府県が「防災重点ため池」に指定し、工事の命令や代執行ができるようになった。

 新法に基づき、京都府では対象の97%にあたる657カ所、滋賀県は94%の1246カ所が届け出られた。未届けは少ないものの、その中には防災重点ため池が京都で7カ所、滋賀で36カ所含まれる。全国では届け出率が76%、未届けが2万5800カ所、うち防災重点は3800カ所に上る。

 下流の田畑を潤してきた貴重な水源は、時代とともに利用が減り、農地は宅地に変わった。池の存在を知らない住民が増え、農家の代替わりで権利関係があいまいになった池もある。

 実際、京滋でも権利者がすでに遠方に移住していて池の管理に無関心な例や、管理組織内の誰が代表として届け出るか決まらない例があるという。他県では、廃池を予定するものの費用負担を巡って折り合いがつかないといったケースを聞く。

 だが近年の雨の降り方の変化、被害リスクは無視できない。大雨だけでなく地震によっても池は決壊することがある。

 まずは未届けをなくし、すべての池について所有者・管理者と自治体の間で情報を共有したい。定期的な点検やメンテナンスにつながるよう、自治体は所有者らの相談に乗り、適切な支援をする必要がある。

 とりわけ防災重点ため池については、国の補助や専門家の知見を得て改修などのハード対策を着実に進めたい。同時に、住民へのリスク周知や避難訓練といったソフト対策が欠かせないが、決壊時の浸水予測を示したハザードマップの作成は順調とは言いがたい。

 作成を担う市町村の人手不足に加え、新法を機に対象の池が増えたこともあって作業が追いついていない。例えば大津市では166カ所中、作成済みは29カ所だ。新型コロナウイルス禍で、住民を集めたワークショップや説明会を開きにくいこともネックになっている。

 災害リスクを理解し、早めの避難行動につなげる意味で、マップの作成には住民参加が望ましい。話し合ううち、行政にも把握されず放置された池の存在に気付いた地域もあるという。

 まちを強くするのは、こうした一つ一つの取り組みの積み重ねだ。