前途が洋々とは開けないようだ。

 日本が国際捕鯨委員会(IWC)から脱退し、31年ぶりに商業捕鯨を再開してから今月で1年がたった。

 戦後の日本にとって国際機関からの離脱は極めて異例である。強硬手段に打って出た形だが、商業捕鯨によって鯨肉の供給、需要環境に目立った好転は見られず、「鯨食文化」の復活は遠いといわざるをえない。

 国際協調路線に大きな影を落とした政治決断の妥当性が改めて問い直されよう。

 日本の脱退は、反捕鯨国が過半のIWCで訴え続けても、4分の3の賛成が必要な商業捕鯨再開は困難と判断したからだ。

 南極海を中心に公海で行ってきた調査捕鯨をとりやめ、商業捕鯨は日本沿岸の領海と排他的経済水域(EEZ)に限った。

 捕獲枠は2018年度の調査捕鯨実績の6割程度とし、IWCの資源管理方式に沿った捕獲可能量の枠内だとした。国際的な批判をかわす予防線を張ったといえよう。

 初年度の捕獲枠はほぼ消化された。調査捕鯨より脂の乗った大きな個体を狙える上、船上での血抜き処理など鮮度向上が市場で好感され、以前よりやや高めの鯨肉価格に反映された。

 ただ、鯨肉の供給量は3割以上減り、2年目も捕獲枠が据え置かれたことで捕鯨業者らは収益の厳しさを訴えている。

 政府は、将来的に捕獲枠拡大や、調査捕鯨で展開してきた北西太平洋など公海での操業を視野に入れる。だが、反捕鯨国の批判が再燃する懸念は拭えず、採算確保との間のジレンマは根深い。

 さらなる悩みが、鯨肉の需要が振るわないことだ。商業捕鯨の長期中断により、1962年度は23万トンあった鯨肉の国内消費量は約3千トンまで激減した。ほとんど口にしたことがない若者らの鯨食離れは顕著だ。

 商業捕鯨が再開しても流通量が少なく、大衆魚と比べても割高なため、食卓からは縁遠い存在のままだ。新型コロナウイルスの感染拡大による外食業界の低迷も打撃となっている。消費需要が伴わなければ捕獲枠拡大も絵に描いた餅に過ぎまい。

 政府は2019年度に続いて20年度も捕鯨業者支援に向けた経費として51億円を予算計上している。だが、捕鯨だけを特別扱いして支援を続けることは理屈が立ちにくい。経費の削減や新たな販路の開拓などによって、事業としてひとり立ちできるかが問われよう。

 日本はIWC脱退後も、投票権を持たないオブザーバーとして関与を続けるとしてきたが、反捕鯨国との溝は埋まっていない。

 他方で、北太平洋での鯨類生態系調査をはじめ、日本とIWCなどとの共同調査事業は継続されている。独自の商業捕鯨分を含め、共有した科学的データに基づいた資源管理の在り方などで一致点を探るべきである。

 太平洋クロマグロやサンマなどの資源管理でも、国際的な連携の強化に向けて日本の存在感を高めることにもつなげる必要がある。