日本と欧州連合(EU)の経済連携協定(EPA)が発効した。

 世界の国内総生産の約3割を占め、域内人口は6億人を超えて、世界最大の自由貿易圏になる。

 日欧EPAと昨年発効した環太平洋連携協定(TPP)を合わせると参加国の人口は10億人超になる。日本はかつてない巨大市場で自由貿易を展開できる。メリットを十分に生かし、デメリットを最小にする政策を早急に打ち出してほしい。

 日本とEUの間では、品目数では日本側で94%、EU側で99%の関税が撤廃される。工業製品はほぼすべてが即時撤廃で、農産品も順次撤廃となる。

 日本からは工業製品の輸出に弾みがつく。消費者には、欧州産のワインやチーズなどの酪農製品、豚肉や食肉加工品などが今より安く入手できるようになる。

 消費者としては歓迎すべきだが、問題は、国内農業を守る体制が整っていないことだ。

 政府は日欧EPAについて国会などで、「安価な製品が流入しても、政府の農家支援策で所得と生産量を保てる」という説明をしてきたが、十分な対策を打ち出しているとは言えない。

 EUには農産品の品質と競争力を高める手厚い政策がある。農家の生活を支える補助金や、衛生管理や加工の独自基準などだ。

 対ロシア制裁で余り気味のワインやチーズなどを日本に輸出したい思惑もEUにはある。

 一方、日本政府は国内の農業生産額が日欧EPAで年1100億円、TPPで1500億円減少すると試算している。EUに対し日本の戦略不足は際立つ。

 国内の食料生産基盤を守れるのか、心配になる。実効性のある対策を早急に打ち出すべきだ。

 米国が保護主義的な通商政策を強めるなか、日本は今年予定される米国との通商交渉で、日欧EPAとTPPの成果を掲げ、自由貿易の重要性を主張する戦略だ。

 保護主義を続ければ米国民が利益を失うことを強調し、米国の方針転換を促してほしい。

 EPAには、労働や地球温暖化対策、生物多様性保護などで国際ルールを相互に尊重、協力することも盛り込まれている。

 国外の石炭火力発電への融資などは、温暖化防止に逆行するとしてEUから問題視される可能性がある。捕鯨や鯨肉取引も同様に監視対象となろう。日本はこれまで以上に世界に対する説明責任を自覚する必要がある。