手前が京都市内で販売された天蚕糸100%で織ったしおり

手前が京都市内で販売された天蚕糸100%で織ったしおり

黄緑色が特徴のひとつである天蚕の繭

黄緑色が特徴のひとつである天蚕の繭

本郷さんが手がけた天蚕の糸。緑色と独特のつやと輝きを放つ

本郷さんが手がけた天蚕の糸。緑色と独特のつやと輝きを放つ

煮ながら繭から糸を引く。糸は切れやすく、難しい作業という

煮ながら繭から糸を引く。糸は切れやすく、難しい作業という

 日本原産の蚕「天蚕(てんさん)(ヤママユガ)」の糸の魅力を伝えようと、長野の染織家たちが天蚕糸100%のしおりを作り、京都市内の書店などで販売を始めた。天蚕糸は、野外での飼育や糸取り、織り方など生産は難しいが、透明感のある輝きと優美なつやから「繊維のダイヤモンド」と呼ばれており、メンバーは「しおりを通して天蚕の美しさに触れ、天蚕や天蚕糸に興味を持ってほしい」という。

 天蚕は、家畜化して飼育法や糸の取りやすさを改良した家蚕(かさん)ではなく、主に野外で飼育する野蚕(やさん)で、山蚕(やまこ)、山繭(やままゆ)とも呼ばれる。クヌギの葉などを食べ、黄緑色の繭を作る。
 長野県有明地区(現・安曇野市)での飼育は天明年間(1781~1789年)に始まり、1897年ごろには同地区を中心に年間800万粒を超える生産を誇った。第2次世界大戦を機に飼育が途絶え、長野県で1973年に飼育が復活したものの、天蚕糸作りに取り組む養蚕家は少なく、他県でも限られた地域にとどまっている。
 天蚕糸は美しい輝きとつやを持ち、織れば軽く暖かで丈夫な布になる。糸にはしなやかさと強さがあるが、繭から引き始めの糸は切れやすく、糸口が家蚕よりも見つけにくいなどの難点があることから、手間と技術が必要。
 天蚕糸100%で織った着物は希少で高額なことから広く知られていない。そんな天蚕糸の魅力を伝えようと、長野県松本市の染織家の本郷孝文さん(75)や安曇野市の天蚕飼育家たちが「やまこプロジェクト」を2017年に立ち上げた。天蚕の飼育から製品の販売までを手掛け、天蚕糸100%のストールやスカーフを企画している。天蚕糸は、不純物を取り除く精練の工程で繭の緑色を失いがちだが、緑色を残す本郷さん独自の技術を生かし、天蚕ならではの色合いが楽しめる。
 手軽な値段で天蚕糸を親しんでもらおうと、今年、新たにしおりを作った。縦13・5センチ、横3・5センチ。天蚕糸が持つ輝きと緑色を楽しめるデザインになっている。メンバーのひとりで京都市左京区の石井園子さん(53)は「長野の山の息吹と蚕の命の強さがそのまま映し出された色に触れてほしい」と話す。
 1枚1980円。ホホホ座浄土寺店(京都市左京区)、恵文社一乗寺店(同)、nowaki(同)で販売している。