大津地裁

大津地裁

 滋賀県彦根市の交番で昨年4月に上司の警察官を拳銃で射殺したとして、殺人罪などに問われた当時19歳の元巡査の男(20)=懲戒免職=に対する裁判員裁判の第3回公判が1日、大津地裁(伊藤寛樹裁判長)であった。元巡査を精神鑑定した精神科医は「上司の指導によるストレスなどから、衝動を抑える力が低下していた」とし、犯行に結びついた可能性があると指摘した。

 精神科医は、元巡査が上司の井本光(あきら)巡査部長=当時(41)、警部に昇任=から何度も書類の訂正を命じられてストレスをためていたと分析。犯行時は「広い視野を持てず柔軟な思考ができない性格に加え、ストレスや不眠などから、衝動を抑える力が弱まっていたのは事実」と説明した。弁護人に、「このことが凶行と結びついたと言えるのか」と問われると、精神科医は「それ以外は考えにくい」と述べた。

 一方で、「衝動が抑えられなくなっている時、一般的に善悪の判断力まで失われるわけではないが、元巡査がどうだったかは言い切れない」とした。

 また精神科医は「(元巡査は)ストレスを適切に処理できない適応障害に該当する」としたが、「ストレスをためて殺害に至ったという結果も含めて適応障害と判断しており、障害のせいで犯行に至ったというのは誤り」と強調。反社会的な人格障害や幻覚、妄想は認められなかったとした。

 この日は臨床心理士も証言した。元巡査は犯行直前に井本巡査部長に両親を侮辱され、「スポットライトで一点を照らすように、『この人が死んだら楽になる』ということにしか意識が向かない状態だった」と説明したが、「物事の善悪を判断する能力はあった」と明言した。

 裁判は、元巡査の責任能力の程度が争点になっている。検察側は完全責任能力を問えると主張し、弁護側は善悪の判断力や行動の抑制力が低下した心神耗弱状態で責任能力は限定的だったとして減刑を訴えている。鑑定は、弁護側の求めに応じ、地裁が昨年12月までに実施していた。