「検体の前処理は集中を要する作業。1時間もすると疲労困憊する」と話す辻所長(大津市御殿浜・県衛生科学センター)

「検体の前処理は集中を要する作業。1時間もすると疲労困憊する」と話す辻所長(大津市御殿浜・県衛生科学センター)

防護服を着用し、安全実験室で作業する職員=県提供

防護服を着用し、安全実験室で作業する職員=県提供

 新型コロナウイルス「第1波」時、感染の有無を調べるPCR検査を一手に担った県衛生科学センター(大津市)。徐々に検査できる医療機関が増えてきたものの、県内2カ所でクラスター(感染者集団)が発生した直後の今月25日には対応能力の2倍以上の検査を実施。「ここを止めてはいけないというプレッシャーがあった」と辻浩司所長(59)は語る。

 センターで現在、確実に検査できるのは1日75件だが、彦根、甲賀保健所管内でのクラスター発生を受けて25日には160件の検体が持ち込まれた。センターの臨床検査技師らが4人ずつ2班に分かれ、午後9時まで連続して作業に当たった。

 2月5日以降、これまでに3700件以上の検体を扱った。PCR検査は、検体を機器にセットして結果が出るまで約2時間半かかる。最も労力と集中力を要するのが「検体の前処理」だという。
 作業は一部自動だが、感染が疑われる人から採取した鼻腔ぬぐい液や喀痰(かくたん)、唾液から遺伝子を抽出する際は、職員も感染するリスクを負う。防護服やゴーグル、高機能のN95マスクを着用し、安全キャビネットに腕だけを入れて作業を進める。1時間で15件が目安だが、「緊張を要するので1時間もすると疲労困憊(こんぱい)してしまう」。試薬の汚染による誤判定を防ぐため、安全実験室に入った係員は試薬の調整をしないなどのルールに基づき、正確な判定を心がけた。

 感染第1波の際は検査数が少ないとの批判もあった。辻所長は「センターで検査を断ったことは一度もない。徹夜してでもやろうという思いがあった」と振り返る。土日も検体が入らない日はなく、4月中旬まではウイルス係の職員3人で業務に当たっていた。現在は係員が感染した場合の代替要員を含め、検査可能な職員を11人まで増やした。

 今年中にウイルスが外部に漏れない安全実験室をもう1室増やし、PCR検査機器も1台追加する予定で、1日210件まで対応できるようになる。既に5月中旬以降、県内6カ所にPCR検査センターが開設され、検査機器を備えた医療機関も増えた。「陽性確定は民間検査機関や病院にお願いし、センターはクラスター対策やウイルスそのものの研究に特化していくのが本来の姿」と辻所長は話す。

 「例えば学校で患者が発生し、周囲の無症状者も検査する必要がある場合、対象者は病気ではないから病院では検査できない。センターがいざという時の最後のとりでになり、(保健所の判断による幅広い検査で)爆発的な感染を防ぐ。きちんとした検査の態勢があるという安心こそ、次の社会活動につながるのだろう」と考える。