災害時に自治体が出す避難情報について、内閣府が「避難勧告」を廃止して「避難指示」に一本化する方針を明らかにした。分かりにくかった二つの違いを解消し、逃げ遅れを防ぐのが狙いという。

 全国で「数十年に1度の大雨」が頻発している。住民らが浸水した住宅などに取り残されたり、土砂崩れに巻き込まれたりする事例が相次いでいる。

 避難のタイミングを分かりやすくすることは重要だが、肝心なのは、住民の確実な避難につなげることだ。政府や自治体は指示を実際の行動にどう結びつけるのか、具体策を検討する必要がある。

 現行の制度では、勧告は安全な場所への移動時間を考慮し、前もって発令するとしている。住民はこの時点ですぐ避難する必要があるが、災害発生が切迫している場合に重ねて避難を促す指示が出るまで動かず、逃げ遅れの一因になると指摘されている。

 指示に一本化することで「情報が出ればすぐ安全な場所へ移動する」と認識しやすくなる効果は期待できよう。ただ、それでも逃げない人はいるとみられる。災害対策基本法は市区町村長に避難情報を適切に発令する責務を規定しているが、住民に対する強制力はないためだ。

 専門家は、差し迫っている危機を伝えることが重要だと指摘する。自治体は携帯電話の一斉送信メールを活用して雨量や河川の水位なども提供しているが、情報を流すだけにとどまっていないだろうか。いま一度検証すべきだ。

 住民も、ただ情報を待っているだけでは十分とはいえまい。

 九州を襲った豪雨では高齢の犠牲者が相次いだ。独居や高齢者だけの「災害弱者」世帯は各地で増えている。

 災害時に支援が必要な人の情報を自治会などと共有する「避難行動要支援者名簿」は、ほぼすべての自治体が作成を終えている。水害などの危険度を示す「ハザードマップ」も市町村のホームページなどで公開されている。

 事前に地域のリスクを把握しておくことは命を守る行動の第一歩といえる。自治会や自主防災組織の役割を再点検し、声を掛け合って避難する訓練を重ねて身を守る手順を確認してほしい。

 自力で移動できない人の避難については、危険度が高い地域では行政が優先して担い、それ以外は住民が協力して対応するなど、役割分担を明確にしておくことも重要だろう。