米国と中国の対立が新たな局面に入ったようだ。

 米中は、互いに相手国の総領事館を閉鎖した。両国が関係窓口となる外交公館を閉じるのは異例の事態である。

 新型コロナウイルスの感染拡大や香港問題を巡って激化した対立が、全面的な報復合戦にエスカレートする恐れがある。

 両大国が修復不可能な関係に陥っては、世界の政治経済を不安定にさせかねない。双方が冷静な対応に努め、負の連鎖を断たねばならない。

 対立の先鋭化は、トランプ米政権が加速させている対中強硬路線の延長線上にある。

 米政権は、米テキサス州ヒューストンの中国総領事館が「スパイ行為や知的財産窃盗の拠点」になっていたとし、閉鎖させた。

 唐突にもみえる措置は、米政権がコロナ対応の失敗から国民の批判をそらす目的が指摘されている。数多い中国の在米公館のうちヒューストンを選んだのは、11月の大統領選での再選に向け、激戦区での支持上積みを狙ったとの見方も出ている。

 ただ、一連の強硬策の根本には、コロナ禍での医療・物資支援などで国際的影響力を広げる中国との覇権争いで、米国の国益を保持しようとする考え方がある。

 米政権は、中国による香港の統制強化に対して制裁措置を連発。習近平国家主席を「全体主義の信奉者」と名指しで体制批判を強めている。強権姿勢に傾く中国への警戒心を国内外で集め、勢力拡大を抑えようとする意図が透ける。

 一方、中国は四川省成都の米総領事館を「中国の内政に干渉し、安全を損なう活動をした」として閉鎖させた。「責任は完全に米側にある」と報復措置であることを明確にしている。

 対立は南シナ海にも及んでいる。中国は独自の境界線を引いてほぼ全域の主権を主張。軍事拠点化も進め、周辺国とあつれきを深めてきた。これを米政権は「完全に違法」と否定した。反発する中国と米国の双方が今月、大規模な軍事演習を行い、緊張が高まっている。

 双方の総領事館閉鎖では、ヒューストンや成都も拠点とはいえず、決定的な対立は避けたい本音ものぞくが、米国側は追加閉鎖にも言及している。楽観はできない。

 米中の報復の応酬が「制御不能」に陥るのは避けねばならない。不測の衝突などを招かないよう双方が自制し、対話の窓を閉ざさないことだ。