トランプ米政権がロシアとの中距離核戦力(INF)廃棄条約について破棄通告を発表した。通告後、6カ月で失効する。

 これを受け、ロシアのプーチン大統領も同条約の義務履行を停止すると表明した。

 新たな軍拡競争の恐れが高まっている。日本を含む近隣諸国に、米国のミサイルが配備されることへの懸念は強い。

 米ロは核拡散防止条約(NPT)で、保有国として核軍縮を進める義務を負っている。オバマ前米大統領が唱えた「核なき世界」はどこへ行ったのか。

 世界を核の恐怖に陥れた冷戦時代を復活させてはならない。唯一の戦争被爆国である日本は、身勝手な行動をやめるよう両大国に強く働きかけるべきだ。

 INF廃棄条約は地上配備の中・短距離核ミサイル(射程500~5500キロ)が対象だ。1987年、当時のゴルバチョフ・ソ連共産党書記長とレーガン米大統領が調印した。

 冷戦終結を後押しする歴史的役割を果たした。だが、米側はロシアが配備する新型ミサイルの射程が条約違反と非難している。

 ロシアは射程は480キロだと反発し、逆に米国が欧州で配備を進める地上配備型迎撃システム「イージス・アショア」が条約違反だと主張している。

 互いの溝は埋まらず交渉は決裂した。だからといって条約破棄は許されない。違反の疑いが持たれるものは双方ともやめるというのが大国の責任ではないのか。

 背景には、中国が条約に縛られずにミサイル開発を進めてきたとのトランプ米政権の懸念がある。条約が失効すれば、中国に対抗してアジアでミサイル配備を強化する可能性もある。

 米ロに中国も巻き込んだ軍拡競争が激化し、日本は中国をにらむ「軍事拠点」となる|。そんな事態は絶対に避けるべきだ。

 トランプ氏は中国も含めた3カ国の軍縮協議に意欲を示したが、実現のめどは立っていない。中国は米国の破棄通告を「遺憾だ」としながらも、条約への参加は否定している。

 なぜ一緒に核軍縮の流れがつくれないのか。北朝鮮の非核化についても、米中がこれでは交渉に説得力を失ってしまう。

 安倍晋三首相はトランプ氏をはじめ、プーチン大統領、中国の習近平国家主席とも良好な関係をアピールしている。外交力を発揮するときではないか。