安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」の限界があらわになったのではないか。

 政府の有識者研究会は、2012年12月に始まった景気拡大期間が18年10月に終わっていたと認定した。政府は19年1月に戦後最長になったとの見解を示していたが、実際はそうではなかった。

 長さこそ71カ月と戦後2番目だが、この間の平均成長率は1・2%程度の低水準にとどまる。

 02年2月から73カ月続いた戦後最長の「いざなみ景気」も平均成長率は1・6%だった。今回の景気拡大期はこれを下回る。

 研究会の座長は、大企業の収益が好調で雇用環境も良かったが、「賃金は上がらず消費も伸びなかった」と分析した。

 好景気は積極的な金融緩和と円安、リーマン・ショック後の世界経済の緩やかな回復が支えた面が大きい。多くの国民にとって実感は乏しく、大企業が潤ってもしたたりは十分落ちてこなかった。

 アベノミクスの成果を誇示してきた政府の認識が妥当だったのか、改めて問われる。

 バブル崩壊後の日本の成長率は他の先進国と比べて大きく見劣りする状況が続いている。

 アベノミクスでは「第3の矢」とした成長戦略で新産業の育成を目指したが、斬新なイノベーションは生まれていない。

 一方で大規模な金融緩和と財政出動は、政権発足前に1万円を割り込んでいた日経平均株価を2万円台に押し上げ、政権の高い支持率につながった。

 ただ株価偏重の姿勢は、市場経済にゆがみも生んだ。

 少子高齢化をはじめとする構造問題への対応が遅れ、デジタル時代に適応するための地道な取り組みもおろそかになった感は否めない。

 消費税率の10%への引き上げは景気拡大期に2度延期し、実施した昨年10月には既に景気の山を過ぎていた。そこに新型コロナウイルス感染拡大が追い打ちをかけたのが現状だ。

 今年4~6月期の実質GDP成長率は米国が年率32・9%減に落ち込み、日本も20%を超える大幅マイナスが予想されている。

 経済の地力を高める戦略をなおざりにしたつけが回り、見かけばかりでリスクに脆弱(ぜいじゃく)な経済となってしまったのではないか。

 これまでの経済政策を謙虚に検証するとともに、コロナ以前とは違う発想で新たな成長戦略を描くことが求められる。