日本が半導体材料の輸出規制を強化したのはルール違反だとして、韓国が撤回を求めている問題で、世界貿易機関(WTO)の紛争処理機関(DSB)は、審理に当たる小委員会(パネル)の設置を承認した。

 この問題について日本は、輸出を規制するのは軍事転用の恐れがあるためで、WTOの協定でも認められていると訴え、前回のDSB会合では、韓国側が要求したパネル設置を拒否した。

 しかし、当事国から2度目の要求が出た場合、全加盟国が反対しない限り、パネル設置は自動的に承認される決まりとなっていた。

 日韓両国は、元徴用工訴訟など外交問題を抱えており、今回も、どう決着するのか、見通しが立たない状況だ。

 またしても、経済権益に関する日本の主張が、国際社会で通用しない事態が生じるかもしれず、早急に態勢を立て直さなければならない。

 こうした中、政府は今月、外務省国際法局に「経済紛争処理課」を新設する。WTOでの国際訴訟が相次いでおり、紛争への対応能力を強化する狙いだという。

 これまで、通商を巡る紛争については、外務省経済局の「国際経済紛争処理室」が担当してきたが、国際法に知見のある国際法局に移管して、「室」から「課」に昇格させる。

 国際訴訟に、より適切に対処できる組織としたいようで、その点は期待したい。

 国際訴訟において、日本の訴えが認められなかった典型的な例となるのは、韓国の日本産水産物禁輸措置を、不当としたものである。

 東京電力福島第1原発事故の影響を理由に、韓国が福島など8県で水揚げ・加工された全水産物の輸入を禁止したのは、科学的な根拠がないとして、WTOに提訴した。

 2018年、「一審」に当たるパネルは、日本の主張通り、韓国に是正を勧告した。

 ところが翌年、「最終審」の上級委員会は、「必要以上に貿易制限的とはいえない」などとして、韓国の措置を容認した。日本側の「逆転敗訴」とされても、仕方のない結果だった。

 WTOの審理には差し戻しがなく、制度的に欠陥がある、との指摘もあったが、それは事前に分かっていたことだ。

 一審勝訴で最終審の結論を楽観視しすぎた、外交交渉能力が足りない、などの批判に耳を傾けるべきだろう。

 次世代通信規格「5G」を巡り、安全保障の面から中国製品を排除する動きが欧米で起きたことを受け、政府は経済安全保障体制の強化にも乗り出す。

 内閣官房の国家安全保障局(NSS)の経済班を増員するとともに、外務省総合外交政策局内を改組して「経済安全保障政策室」を設け、経済班と連携させる。

 経済紛争処理課の新設も併せて、経済権益に関連して組織体制を整えるのは大事である。とはいえ、それだけで的確な対応ができるとは限らない。

 政府には、国際情勢や紛争相手国の動向を察知し、成果を上げる戦略が必要ではないか。