香港政府が、9月の立法会(議会)選挙の1年延期を発表した。

 新型コロナウイルス感染拡大を理由にしているが、民主派の伸長を懸念する中国・習近平指導部の意向をくんだことは疑いない。

 立法会選を巡っては、選管当局が民主派メンバー12人の立候補資格を認めない決定を下している。

 出馬の妨害ばかりか、選挙そのものを遠ざけようというのは、民意に耳を傾ける意思がないことをあからさまにしたといえる。

 6月末施行の香港国家安全維持法(国安法)で、市民の中国政府に対する反発は強まっている。

 立法会選に向けた民主派の予備選が予想以上の関心を高めたことに、中国政府が危機感を抱いたとも伝えられている。

 習指導部の強権的な姿勢が裏目に出たのではないか。選挙を延期することで、国際的な批判をかわそうとの狙いも透けて見える。

 ただ、香港の「中国化」はじわじわと進んでいる。香港の人々の自由と民主主義がさらに浸食されていかないか心配だ。

 立候補資格の制限は前回2016年の6人から倍増した。それでも中国政府には選挙情勢が厳しいとの判断があったようだ。親中国派の支持者の中には中国本土に住む有権者も多く、コロナ禍で香港に戻って投票することが難しいとの事情もあるとみられている。

 それだけ、民主派への支持は底堅いとの認識があるということだろう。中国政府に話し合いなど軟化する姿勢が見られない以上、今後も抑圧が続くと予想される。

 国安法施行後の今回選挙で、立候補者は「香港は中国の不可分の一部」とする香港基本法(憲法に相当)の順守を誓う文書への署名を義務づけられた。だが、立候補資格を認められなかった一部の民主派は署名拒否を表明した。

 こうした状況で選挙が行われても「茶番」のそしりは免れまい。

 香港の「法治」も疑わしくなっている。基本法で規定されている立法会議員の任期(4年)について香港政府の林鄭月娥長官は、中国の全国人民代表大会常務委員会が解決策を決定すると明言した。議会での論議もなく、基本法の解釈さえ中国政府側に委ねた形だ。

 民主派の立法会議員らが「乱暴に市民の投票の権利を奪うことになる」と批判したのも当然だ。

 選挙への介入や統制は、市民の政治的要求を封じ、意思決定の仕組みを危うくする。国際社会は重大な関心を持ち、厳しい目を向け続けねばならない。