給付金の手続きについて弁護士(奥)に相談するホームレスの男性。銀行口座や電話は持っておらず、住民票は他府県にあるという=京都市下京区・区役所

給付金の手続きについて弁護士(奥)に相談するホームレスの男性。銀行口座や電話は持っておらず、住民票は他府県にあるという=京都市下京区・区役所

 新型コロナウイルスの緊急経済対策として国民1人当たり10万円を配る「特別定額給付金」。政府は「一日も早く届ける」とうたったが、制度からこぼれ落ち、なかなか受け取れない人たちがいる。路上や公園で暮らし、受給に必要な住民票を用意できない路上生活者(ホームレス)たちだ。京都市は7月に相談を受け付け始めたが、当事者や支援者からは対応の遅さや制度の在り方に不満の声も上がる。

 「住民票がどこにあるか分かりますか」。京都市が下京区役所に設けた路上生活者向けの臨時相談窓口。市の委託を受けた弁護士が、訪れた男性(55)に尋ねた。

 男性はさまざまな事情を抱え、2年前から同区の梅小路公園で暮らす。住民票がある可能性が高いのは大阪府枚方市だが、「もう何年も行っていない。申請書が届いているかも分からない」。郵便を受け取れる住所はもちろん、携帯電話も銀行口座も持っていない。相談の末、弁護士が枚方市に照会し申請書の再発行などの手続きを進めることになった。

 京都市では一般的な場合、特別定額給付金が入金されるのは申請から10~15日後とされている。一方、ホームレスの場合は本人書類の確認や給付金の受け渡しに時間がかかり、最短でも1カ月はかかるという。

 男性には、政府が1世帯につき2枚を配った布マスクも届かなかった。しかし男性は「路上生活をしているのは自業自得なので。(給付金を)もらえるだけありがたい」と語る。10万円は洋服の購入に使う予定だ。「新しい服で、住み込みの仕事が見つかれば」

 市の臨時窓口が開設されたのは7月中旬の3日間のみ。それでも支援団体やチラシを通じて窓口を知った15人が訪れ、中には市外から来た人もいた。

 大阪市西成区から窓口を訪ねて来た男性(63)は、コロナ禍で建設作業員の職を失い、3月から路上生活を余儀なくされた。この数カ月間は、ボランティア団体の炊き出しやコンビニの廃棄食品を頼りに食いつないできたという。

 給付金が出ると知ったのは、まだ携帯電話が使えた4月末。住民票がある京都市のコールセンターに何回も電話したが「(路上生活者への)対応を検討しているので待って、と言われるばかりだった」。臨時窓口に来たことでようやく手続きはできたが、給付金を受け取れるのは今月以降の見込みだ。男性は「困っている人がいの一番にもらえると思っていたのに最後の最後。政治家も行政も俺たちのことは何も考えていない」と憤る。

■京都市相談32人止まり 申請間に合わぬ恐れも

 総務省は4月下旬、ホームレスなど住民登録がない人の特別定額給付金申請について、自立支援センターやネットカフェが住所として認定される場合があるとし、自治体に対応を求めた。ただ現実にはセンターに空きがなかったり、ネットカフェの同意が得られなかったりして、住民登録が困難な実情がある。

 京都市によると、市内の路上生活者は52人(今年1月時点)。ただ、いわゆる「ネットカフェ難民」は調査しておらず、住所不定者の実数は不明という。市は7月から市内の弁護士事務所と連携して相談に対応しているが、これまで相談してきた人は計32人にとどまっている。

 市の申請締め切りは9月15日で、既に対象の9割を超える世帯が10万円を受け取っている。一方、ホームレスの人は戸籍をたどって住民票の所在地を探すといった作業が必要な場合があり、締め切りに間に合わないケースも想定される。

 京都市内で路上生活者の支援を続ける「きょうと夜まわりの会」の本田次男さん(65)は「(ホームレスの人は)借金苦から逃げて住民票を恐怖で移せなかったり、家族と音信不通になっていたりといろんな事情を抱えている。世帯単位で給付され、身分証明書や口座が必要な特別定額給付金は、本当に手を差し伸べないといけない人に寄り添った制度になっていない」と指摘する。