新型コロナで休校した場合の校名発表に関する各教育委員会の方針

新型コロナで休校した場合の校名発表に関する各教育委員会の方針

 新型コロナウイルスに小中高校の児童生徒が感染して休校した場合に校名を公表するかについて、京都府や滋賀県の自治体で対応が分かれている。保護者や住民の不安解消と子どもの人権保護のバランスをどう取るか。各自治体の教育委員会は地域事情なども考慮して慎重に判断している。

 児童生徒の感染による休校は7月以降、京都府、滋賀県内で相次いでいる。京都市教委は校名を公表しており「学校は公共の施設であり、感染者のプライバシー保護と市民の不安解消、感染拡大のリスクなどを総合的に考え個別に判断している」と説明する。京都府教委も同様で「保護者の不安感の払拭(ふっしょく)のため」とする。また甲良町教委は「町民の不安に対する配慮」として公表した。

 公表する自治体の多くは、校名を非公表にすると住民らが不安に陥り、会員制交流サイト(SNS)などで校名を特定しようとする動きが起きて地域が混乱する恐れがあると考えている。亀岡市教委の神先宏彰教育長は「懸念したのはよからぬデマや情報が流れること。学校で感染者が出た際に(保護者らから)心配する連絡があったが、校名を公表したらピタッと止まった。ある意味、正しい情報を出すのは大切だ」と強調する。

 一方、校名を公表しなかった自治体もある。宇治市教委は「陽性が判明した生徒が不特定多数から非難されることが考えられ、他の生徒も同じ学校という理由で影響を受けることがあり得るから」と説明。井手町教委は「町内に小学校は2校しかなく、府が自治体名や年代、性別を明らかにすれば個人が特定される恐れがあり、校名は出せない」と地域事情に言及する。大津市教委は「個人のプライバシーを守るため」だが、集団感染などが発生した場合は公表も検討するという。滋賀県教委も非公表の考えを示している。

 校名の公表は全国でもばらつきがある。大阪市は「社会的な影響が大きいため」と原則公表。一方、さいたま市は非公表を貫いており「公表すれば個人が特定され、差別につながる恐れがある。該当する学校の保護者や濃厚接触者など必要な人には情報が伝わっている」とする。

 文部科学省は校名の公表に関する基準を定めていない。健康教育・食育課は「感染状況や情報公開への姿勢は自治体ごとに異なる。国としては一律に基準は示さず、各自治体によって判断してもらっている」という。

 情報公開に詳しい同志社大の佐伯彰洋教授(行政法)は「感染拡大防止と人権保護のバランスをどう取るかが問題だ。公表するのであれば基準となるガイドラインを設けるべきだ。ただ夏休みで児童生徒が登校していないなど公表が不要な場合もあり、最終的にはケース・バイ・ケースで考えるべきだ」と話す。

 世界人権問題研究センター(京都市中京区)の所長を務める坂元茂樹同志社大教授(国際法)は「人は誰でも病気になるのに、今の社会には新型コロナの感染者を犯人のように扱う人もいる。いじめにつながる恐れがあり、感染者が特定されないよう配慮する必要がある。地域事情に応じて各自治体が慎重に考えるべきで、風評被害が想定される場合は公表を控えた方がよいだろう。子どもに対するネットのリテラシー(読解力)教育を強化する必要もある」と指摘する。