どうして後を絶たないのだろう。またもスポーツ指導者による暴力行為が明るみに出た。

 日本大ラグビー部で、元ヘッドコーチが部員の頭をつまようじで刺し、熱いヘラを体に押しつけるなどの暴行を繰り返していた。未成年の部員に飲酒を強要してもいたというのだ。

 同部の第三者委員会が調査し暴行事実を認定、懲戒処分が相当としたのに、本人からの辞任申し入れを受け入れた。

 同部は適切な対応としているが、これら暴行は犯罪とみなされてもおかしくない。選手への謝罪で済ませず、もっと厳しく責任を追及すべきではなかったか。

 日大では2年前のアメリカンフットボール部の悪質反則問題を教訓に、競技部の改革を進めている。それだけに、一部のスポーツ指導者に残る暴力容認の根の深さをうかがわせる。

 ただ、今回は部員自身が声を上げて報告書をまとめたといい、意識の変化もみられよう。

 折しも先月、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウオッチが、日本のスポーツ界での暴力や暴言の実態について調査した結果を発表している。世界各地の性差別や難民などについて問題提起してきた非営利組織が、人権の視点で提言しており、注目していい。

 調査は五輪・パラリンピック経験者を含め800人以上に、オンラインアンケートやインタビューを実施。子どもの頃の経験を25歳未満の人に質問したところ、回答者381人のうち19%がスポーツ活動中に殴打などの暴行、18%が暴言をそれぞれ受けていた。

 さらに、競技中に水を与えられなかったり、罰と称して髪を切られたりもしている。これらは指導とはいえず、子どもへの虐待にあたると厳しく指摘している。

 インタビューでは「数えきれないほど叩(たた)かれました」「鼻血が出たんですけど、監督が殴るのは止まらなかった」など生々しい証言が聞かれた。

 それでも子どもたちは周囲に言い出しにくく、後年まで心の傷を抱えるという。

 同団体は、通報相談窓口が競技団体ごとで、加害者の責任追及も不明確なためだとしている。その上で、暴行や虐待を認知して調査、処分する権限を持つ独立行政機関の設置を国に提言している。しっかり受け止めて、議論すべきではないか。

 東京五輪・パラリンピックに向け、暴力は許さないというスポーツへの姿勢を、日本は世界に示す必要がある。