帰省をしていいのか、やめるべきか-。お盆を目前に控え、戸惑っている人は多いだろう。

 離れて暮らす家族や友人らと親しむ待望の機会である。一方、新型コロナウイルス感染が全国的に再拡大している中、大勢の人の移動で都市部から地方へ、また、祖父母と孫といった世代間で感染を広げないかという心配がつきまとう。

 帰省の在り方を巡る政府の呼び掛けに、ちぐはぐな印象が拭えないことが、多くの国民に不安と混乱を広げているのではないか。

 政府内では当初、お盆の帰省について西村康稔経済再生担当相が「慎重に考えないといけない」と抑制的な対応を促した。だが、菅義偉官房長官は「一律に自粛を求める考えはない」と釈明し、軌道修正を図ったとみられている。

 これに対し、専門家らでつくる政府の新型コロナ対策分科会は急きょ、「3密」を避けることや、手の消毒など十分な感染症対策ができない場合は「帰省をできれば控えて」とする提言を発表した。

 帰省時は、祖父母らとの接触や飲酒・飲食の機会が増えるとし、高齢者が感染して重症化するリスクやクラスター(感染者集団)発生への危機感をあらわにした。

 西村、菅両氏とも提言に沿って対応するとしたが、あくまで一律の自粛要請を否定する政府と、ブレーキに軸足を置く形の専門家とに温度差があるのは明らかだ。

 かたくなな政府の姿勢は、肝いりで始めた観光支援策「Go To トラベル」との整合性を保つためにほかなるまい。

 旗振り役の菅氏は「地方経済を支える観光業が瀕死(ひんし)の状態だ」と旅行再開策を正当化するが、人間の健康被害と同列には論じられない。もとより感染の収束後からと閣議決定した政策であり、再拡大する中では需要回復より、事態をさらに悪化させる恐れが強い。

 全国の知事からは「県外との往来は控えて」(佐竹敬久秋田県知事)などの呼び掛けが相次いでいる。感染者が急増する沖縄や愛知は県独自の緊急事態宣言を出し、県境をまたぐ移動自粛を求めている。

 さらなる感染拡大への地方の危機感を重く受け止めるべきだ。

 だが、政府は感染防止策の徹底を訴えるばかりだ。観光支援の対象とする宿泊施設に義務付けた対策も確認態勢が伴わず、「責任丸投げ」との批判が出ている。

 自身と大切な人、郷里に感染を広げることにならないのか。帰省は家族内でよく相談し、慎重に判断することが必要だろう。