晴れ着姿の新成人が弓道の腕を競った今年の「通し矢」(1月12日、京都市東山区・三十三間堂)

晴れ着姿の新成人が弓道の腕を競った今年の「通し矢」(1月12日、京都市東山区・三十三間堂)

矢を手に通し矢への思いを語る女子学生たち(京都市北区)

矢を手に通し矢への思いを語る女子学生たち(京都市北区)

 「通し矢に憧れて弓道を始めたのに、このままでは出られない」。こんな不安を訴える声が京都市内の大学に通う女子学生(19)=北区=から京都新聞社の双方向型報道「読者に応える」に寄せられた。晴れ着姿の新成人らが毎年1月に三十三間堂(東山区)で弓道の腕前を競う「通し矢」。京都を代表する新春の風物詩も収束が見通せない新型コロナウイルスの脅威にさらされている。

 大学で日本文学を専攻する女子学生は現在2年生。テレビでも放送される通し矢に憧れ、昨年の入学と同時に弓道サークルに入った。「本当に思い入れがある」と、2年生の間に予定していた海外留学の1年延期を決めた。滋賀県内の道場に毎週通い、1年で1級に昇級。今年は通し矢出場の条件となる初段の認定をもらうため、審査会に臨むつもりだった。
 1月に現地で通し矢を見学。「きらびやかで衣装も豪華。あの場所に立って必ず的に当てたい」とさらに気持ちを高めていたが、4月に審査会の中止が発表された。新型コロナの影響でサークルも今は練習を休止中。それでも「もし審査会が再開されれば、死にものぐるいで頑張りたい」と希望を持ち続ける。
 通し矢には新成人のほかに範士など称号者の部門もあり、将来的には参加する道はあるが「現実的じゃない」と同じサークルに所属する同級生の女子学生(19)。「やっぱりきらびやかな振り袖の姿に憧れる。家族も楽しみにしているのに」と訴える。

 「通し矢」を主催する京都府弓道連盟事務局の野崎隆司さん(71)は「学生さんにとっては一生に一度のこと。切実だろう」と思いやる。同連盟には審査会の開催や救済措置を求める嘆願書が全国の大学から届いているという。
 通し矢は平安時代後期に始まったと伝わり、江戸時代には武士が夜通しで三十三間堂の軒下で弓の技術を競ったとされる。現在は「三十三間堂大的全国大会」として、府弓道連盟と妙法院(東山区)が「成人の日」の時期に合わせて開催している。例年、新成人の男性と女性、称号者の計3部門に約2千人が出場し、うち新成人が約9割を占めるという。
 全日本弓道連盟は今年、新型コロナ対策の特例措置としてビデオ審査を認めているが、部活動を再開した高校生以下が対象で、新成人が今年初段を取るには各都道府県での審査会でパスするしかない。府連盟は全日本連盟に審査会の再開を要請しつつ、通し矢の出場登録期限の延長など救済策を模索している。
 来年の通し矢は1月17日に予定されているが「現時点で開催の可否判断に至っていない」(府連盟)。会場には出場者だけでなく大勢の見学客が集まるため、府連盟は「密の状態を避けたい。感染者が出るといけない」と無観客での開催を検討。来年71回目を迎える伝統行事も「新しい様式」を余儀なくされている。