食堂で夕食をとる湖国寮の学生たち(東京都武蔵野市)

食堂で夕食をとる湖国寮の学生たち(東京都武蔵野市)

 お盆の帰省を巡り、首都圏の大学に通う滋賀県出身の学生たちが頭を悩ませている。滋賀県の三日月大造知事は帰省の自粛を求めない一方、東京都の小池百合子知事は自粛を求め、政府は各知事の判断を踏まえた慎重な行動を呼び掛ける。「三方よし」とはいかず板挟み状態にある県出身学生が多く住む「湖国寮」(東京都武蔵野市)を訪ねた。

 6日夜、東京大2年の瀬戸友暁(ゆうき)さん(19)は迷っていた。3月から高島市の実家に帰省していない。「東京からウイルスを持って帰ったらどうしようという思いがある。でも両親や家族の顔を見たいし…」と心中を打ち明ける。朝と夕の2回提供される寮の食事が9日から20日までなくなるため、東京にとどまると外食や買い出しが増え、感染リスクが高まるのも怖い。

 瀬戸さんをさらに悩ませるのが、判断基準とする国や自治体からのメッセージに違いがあることだ。三日月知事は4日の会見で「県民にとってお盆は大切な季節。お盆の帰省はむしろしていただきたい」と述べ、感染防止対策を徹底した上での帰省は首都圏からでも問題ないと認識を示した。一方、小池知事は6日の会見で「都外への帰省は控えて」と促した。菅義偉官房長官は7日、あらためて一律の自粛は求めないとし、「各都道府県の要請を踏まえた上で判断していただきたい」とげたを預けた。

 湖国寮の寮生は76人。大学がオンライン授業のため実家にとどまっている学生もおり、7月末時点で50人が在寮していた。帰省を希望する場合は事前に届け出をする必要がある。例年お盆の時期は半分弱の学生が帰省するが、今年は10人程度にとどまるという。植田公威寮長(61)は「8月に入り、荷札に食料品と書かれた段ボール箱が届くことが急に増えた。送り主はみんな、お盆は帰らないと決めた学生の実家」と話す。

 大津市の実家への帰省を急きょ取りやめた女子大学生(23)は「滋賀は東京より感染者が少なく、帰省して自分や家族が感染したら近所で有名になる。県知事が大丈夫と言ってもみんながそう思ってくれているわけではない」と周囲の目を気にする。男子大学院生(24)も「知事や政府の人はいろんな事情を背負っている。全員に当てはまるルールはなく自分で判断するしかない」。家族と相談して寮に残ることを決めた。

 今後もコロナが収束する保証はなく、帰省のタイミングが難しいとの声も。「年末もまた感染者が増えたらどうしよう。お正月を1人で過ごすのは寂しいかな」。4月に入学してから一度も帰省できていない女子学生(18)は、もどかしそうに話した。