和ろうそくを作る田川さん。コロナ禍で和ろうそくの需要は落ち込んでいる(京都市伏見区・中村ローソク)

和ろうそくを作る田川さん。コロナ禍で和ろうそくの需要は落ち込んでいる(京都市伏見区・中村ローソク)

 新型コロナウイルスの感染が再び拡大する中、列島各地はお盆を迎える。今夏は感染防止のため帰省を自粛する動きが広がったことで、例年お盆に増える工芸品や菓子などの季節需要が低迷。京都の老舗やメーカーにとって、春の観光シーズンに続く重要商戦の「消失」は痛手で、各社は「最悪のタイミングでの第2波だ」と頭を抱える。

 「コロナ禍で売り上げが春先から落ち込んだが、耐えに耐えて、お盆に向けてろうそくを作ってきたのに」。和ろうそくを製造する中村ローソク(京都市伏見区)の田川広一社長(57)は嘆息する。

 3月以降の単月売り上げは、例年の半分に満たない。感染拡大の「第1波」が春の彼岸を直撃し、需要は蒸発。お盆の墓参りをはじめ、各地域で祭りや神事が開かれる夏のろうそく需要にわずかな望みをつないできた。

 だがコロナ禍で祭りなど大型イベントは次々に縮小・中止に。お盆の帰省も地方自治体などの自粛要請で売り上げの回復は厳しい。田川社長は「和そうろくやお線香を買って帰省する昔からの需要がなくなりかねない最悪の展開だ」と話す。実質無利子・無担保融資などを利用して職人の雇用を守っているが、「相当厳しい」と言う。

 調査会社クロス・マーケティング(東京)によるインターネット調査では、今年のお盆は「帰省する予定はない」と答えた人が8割近くに上った。交通機関での「3密(密閉、密集、密接)」や、帰省先で感染を広げるリスクを恐れる人が多いという。JR西日本によると、7月22日時点で、お盆時期の山陽新幹線と北陸新幹線の予約は、前年の2割程度という状態だ。

 菓子メーカーも影響を受ける。せんべい店「田丸弥」(京都市北区)を営む18代吉田篤史さん(35)は「オンライン授業の影響かもしれないが、今年はまだ帰省のお土産を買う学生さんが1人も来ない」と話す。帰省で用意する土産や供物の注文は激減し、寺院が檀家(だんか)に用意する菓子も件数が減っているという。

 「帰省自粛が定着すれば、お盆の意味が薄れ、数珠を持つ機会が減りかねない」。こう懸念するのは、数珠製造卸の神戸(かんべ)珠数店(京都市下京区)の神戸伸彰代表取締役(41)。影響は現在少ないが、生活様式の変化で法事や供養が簡略化すれば、将来の需要を揺るがす可能性があるという。

 一方、新たな需要やビジネスに挑む企業も。目立つのはコロナ禍で利用が広がった電子商取引(EC)だ。

 市内の中堅菓子メーカーは8月に入り、宅配注文の売り上げが店頭購入を上回った。同社はEC部門への人員を増強。売り上げは例年の8割程度まで回復すると見込む。薫香製造販売の松栄堂(京都市中京区)もEC事業の強化に向け、SNSでの情報発信に力を入れる。

 生花業界は、コロナ禍で葬儀に参列できなかった人が初盆に花を贈ったり、近隣の墓参りで花を購入したりする需要が多く、ほぼ例年並みの状況という。帰省する代わりに花を届けるキャンペーンもあり、ある参加店舗は「花は癒やしと思ってくれる人が増えているのでは」と胸をなで下ろす。