妊婦の血液からダウン症など胎児の染色体異常を調べる「新出生前診断」を、学会の認定を受けずに行う施設が急増している。

 認定施設でつくる団体の調査では、7月上旬時点で135施設を数え、認定施設(109施設)を上回った。

 形成外科や美容外科など産科以外の民間クリニックでの実施例が目立つという。高齢での出産に不安を持つ妊婦の増加などが背景にあるとみられている。

 生まれてくる子どもの健康状態を知りたいとの思いは理解できる。だが、無認定施設で十分な説明もされずに診断を受け、結果をどう受けとめたらよいのかに困って認定施設に駆け込む妊婦も少なくないという。

 診断の目的や意味、結果の受けとめ方への理解が欠けたまま検査がなし崩し的に広がれば、不適切な形で「命の選別」につながってしまうのではないか。

 現在は学会が定めた指針以外にルールがなく、妊婦の要望に応じて診断が拡大しているのが実情だ。対応策が求められる。

 新出生前診断に関する日本産科婦人科学会の指針は▽産婦人科医と小児科医が常勤し、どちらかが臨床遺伝専門医の資格を持つ▽検査前後にカウンセリングを行う▽対象は35歳以上-などとする。このため、認定施設は大規模病院が中心だ。

 無認定施設での診断は認定施設に比べ費用が安い場合があるが、結果通知がメールだけだったり、陽性と判定されても「内容はネットで調べて」と言われるなどの報告例もあるという。

 胎児の将来に関わる診断なのに、説明が不十分で、結果が持つ意味も伝えないのなら、妊婦は不安に陥ってしまう。

 だが、無認定施設の多くは産婦人科でないため、学会の指針で規制するのは難しいという。

 一方、受診した妊婦は新出生前診断の検査が始まった2013年度の約7700人が16年度には倍増する増加ぶりだ。認定施設も当初の15カ所から大幅に増えたが、妊婦のニーズはそれを上回っているといえる。

 学会は6月、開業医でも診断ができるようにする新指針を示した。認められれば施設要件が緩和され、全国で認定施設が約70カ所増える見通しという。

 無認定施設が増えている現状をふまえ、妊婦の要望に応えようとの狙いがあるのだろう。ただ、診断の拡大が検査を受けて当然との風潮を助長したり、生まれてくる子どもの「異常」を排除したりする考え方につながらないようにする必要がある。

 要件緩和で妊婦への説明やカウンセリングの質が低下するようなことがあってはなるまい。子育て支援や障害者福祉なども含め、妊婦や生まれてくる子どもを支える環境を整える仕組みづくりも併せて検討すべきだ。

 出生前の診断は、子どもの障害を前もって把握することで、さまざまな準備をしやすくする目的があったはずだ。だが、染色体異常が最終的に確定した妊婦の9割が中絶を選んでいる。

 検査によって何を明らかにするのか、命や障害をどう考えるか-。根源的な議論を社会全体で深めていかねばならない。