「長谷川軍記日記を読む」を著した伊東さん=京都市南区・長谷川家住宅

「長谷川軍記日記を読む」を著した伊東さん=京都市南区・長谷川家住宅

 幕末の東九条村(京都市南区)の豪農・長谷川軍記の日記を研究してきた佛教大非常勤講師の伊東宗裕さん(69)が、その成果を著書にまとめた。新選組との関わりなど、農村にも政変の影響が及んだことを示す内容で注目された史料だが、読み解くと歴史上の事件と距離を置いて暮らしていた、当時の庶民の姿が見えてきたという。

 軍記は農民でありながら、幕府から侍の処遇を受けた郷士。日記は軍記が長谷川家当主になった1845年から死去する71年まで27冊書かれた。伊東さんは著書で、軍記の妻や子の日記を含む計29冊分の内容を解説している。

 禁門の変があった64年の日記には、長州藩勢を迎え撃つ新選組が会津藩(福島県)の藩士らとともに同村に分宿したと記される。2017年に新選組にまつわる新史料として話題になったが、伊東さんは▽緊迫が強まる中で逃げ支度をした▽お盆の行事を延期したりしていた―などとする日記の記述を踏まえ、農村では「生活に侵入してきた迷惑な出来事」と受け止めていた、と指摘する。

 日常と政変との対比は、大政奉還のあった1867年の日記にも見える。10月13日に宇和島藩(愛媛県)の宿所に出入りしていた者から「大砲を準備していて20日ごろに変事が起きる」と聞いたものの、軍記は同18日には子どもを連れて東福寺へ紅葉狩りに出かけていた、という。

 伊東さんは「日記を読むと、歴史の転換点に身を置きつつも、日常を取り戻そうとした庶民の息づかいがよく分かる」と話す。

 伊東さんの著書「長谷川軍記日記を読む」は、B5判51ページ。1500部発行。発行元の「長谷川 歴史・文化・交流の家」が1部1500円で配布。075(606)1956。