サモア戦に勝利し笑顔の松田(右)と坂手=5日、豊田スタジアム

サモア戦に勝利し笑顔の松田(右)と坂手=5日、豊田スタジアム

 「自分が大舞台で戦っている姿を見せたかった」。ラグビーのワールドカップ(W杯)日本代表で奮闘している松田力也(パナソニック、伏見工業高-帝京大出)は、亡き父への思いを胸に秘めて13日のスコットランド戦に挑む。日本初のベスト8入りに挑む大一番。ラグビー選手だった父から受け継いだ強い精神力で、仲間とともに大きな壁を乗り越える。

 松田の父大輔さんは花園高、社会人リーグのユニチカでプレーした。同学年で、京都市役所のメンバーとして対戦した稲田雅己さん(54)=京都市教委、前凌風小・中校長=は「体格が良くてパワフルな選手。やんちゃで気が強く、フランカーやセンターで活躍していた」と懐かしむ。
 大輔さんは松田が小学5年の12月25日、くも膜下出血で急逝した。松田は「やられたらやり返すではないが、(小さい頃から教えられた)どんな相手にも絶対に負けないという気持ちは常に持っている」と思いを語る。父亡き後は、母親や祖母ら家族だけでなく、幼い頃から接してきた父のラグビー仲間に声をかけられ、助けられたという。
 松田は、故平尾誠二さんと同じ陶化中(現凌風中)に進んだ。偶然にもラグビー部で指導した稲田さんは「運動能力が高くて性格も良い。勉強もできるので、いつも周りに人が集まるタイプ」と振り返る。選手として「パス、ランは抜群。体幹が強くて将来は世界に通じる」と感じた。チームが弱くてうまくいかない時期は主将として自分の感情を懸命に抑え、仲間への声かけに徹する姿もあったという。
 伏見工高(現京都工学院高)の恩師である高崎利明さん(57)=同高副校長=は「彼(松田)にとって憧れの父親だったはず。幼い頃から父やラグビーを通じた人とのつながりに接し、かわいがられてきた。家族の愛にも恵まれた。周囲がみんなで支えようとし、彼はずっとその恩に応えようとしている」と思いを寄せる。
 松田は開幕戦を含む2試合に出場。先発のSO田村優(キヤノン)とは持ち味が異なり、「僕はどんどん強気に仕掛けていくタイプ。途中出場でも日本にエナジーを与え、インパクトを残すことが役割」と意気込む。家族や父親の友人、恩師、そして日本のファンのために勝利を目指す。「今もたくさんの応援をもらっている。自分が活躍する姿を見せることが一番の恩返しだと思っている」