人口が1300人を割り、京都府内最少の笠置町。乏しい住宅が帰郷や移住の課題として浮かぶ

人口が1300人を割り、京都府内最少の笠置町。乏しい住宅が帰郷や移住の課題として浮かぶ

 「両親をふるさとへ帰らせてあげたい。でも、帰れない」。京都府笠置町出身で現在は奈良市で高齢の両親と暮らす男性(49)が、3年以上前から帰郷を模索するも、かなわずにいる。背景には、住宅が乏しい田舎の小規模自治体ならではの課題が浮かぶ。こうした課題は移住施策や住民の高齢化とも密接に絡み、未来に影を落としている。

 男性は2015年7月、病気で体調を崩した母(81)のため、笠置町から、通院しやすい奈良市の団地に父(89)も含めた一家3人で移った。母の症状は重く、覚悟を決めての移住だったが、自力で歩けるまでに回復。16年3月から笠置町に帰郷しようと考えた。

 ただ、老朽化が進んだ自宅に戻ることは断念。町民の半数以上が暮らし、住み慣れた南部地域で住居を探したものの、町営住宅はほとんどが耐震基準を満たしていないとみられ、町の方針で新規入居を受け付けていなかった。同地域でも入居できる町営住宅はわずかにあったが満室。その後、空きが出たものの、町の不手際で別の人が入居する事態も重なった。

 町の空き家バンクも登録物件はわずかな上、高齢の両親に配慮すると急な階段がある家は生活が難しいといった条件もある。4軒ほど紹介を受けたが、希望を満たす家は今も見つかっていない。

 最近では家族の間で笠置町の話が出ることも減った。ただ、同町生まれの母は時折、近所に住んでいた幼なじみは元気かな、と漏らすという。「心の中では帰りたいと思っているはず」と男性は推し量る。父も昨年、心臓を患って入院した。幸い回復したものの、状況が好転しないまま時間だけが過ぎていくことに焦りを感じている。

■人口1300人割り込み 空き家発掘も難しく

 人口が1300人を割って府内最少の笠置町にとって喜ばしい帰郷や移住も、住宅が乏しくては進むはずもない。都市部と違って町内に民間運営の集合住宅などは無く、空き家の有効な利活用も停滞気味だ。
 過去の調査では町内に約70軒の空き家があった。今年に入って2件の新規登録があったものの、それを含めても現在の登録件数は4件(今後ホームページに掲載する物件も含む)。「盆や正月に帰省する」「荷物が置いてある」といった理由から登録をためらう所有者が多いという。一方、町職員のマンパワー不足もあって空き家の発掘や登録への呼び掛けに力を割けない側面もある。町営住宅は、同町笠置の「奥田団地」(27戸)、「後谷団地」(10戸)、同町有市の「有市団地」(36戸)の計73戸ある。有市団地は順次、耐震改修を進めているものの、昭和20~30年代に建てられた後谷団地と、昭和50年代に建てた5戸を除く奥田団地は将来的に取り壊す方針。跡地の活用は決まっていない。2014年度策定の町営住宅の長寿命化計画では、高齢者向け住宅や若者向け住宅の整備も掲げているが、具体案はまだない。
 例えば、不便な場所に住む住民が、高齢を理由に運転免許証を返納して比較的便利な場所に引っ越したいと思っても、町内で住宅を探すのが難しいのが現状。また、就職や結婚、出産を機に隣接する木津川市などに移住するケースも多く、人口流出を防ぐために住居整備が必要との声もある。
 こうした状況を踏まえ、西村典夫町長は「空き家を町で借り、改修して貸し出す『借り上げ住宅』の制度を今後、検討していきたい」と話す。