後ろ脚で掘った穴に産卵するイシガメ

後ろ脚で掘った穴に産卵するイシガメ

<いきものたちのりくつ 中田兼介>

 私ごとで恐縮ですが、自宅のささやかな庭でカメを飼っています。最近は、人間に乱獲されたりアライグマに食われたりで数が激減しているイシガメです。

 6月ごろになるとメスがソワソワと庭中を歩き始め、ここぞという場所を見つけると後ろ足で15センチほどの深さの穴を掘り、6~8個ほどの卵を産みつけます。1個産むたびにそっと足で卵を触れて無事を確認する姿は大変感動的です。産卵が終わるとお母さんガメは穴を丁寧に土で埋め、子ガメが8~10月にふ化してきます。

 生まれて何年かすると性別が分かるのですが、わが家の場合、生まれてくる子ガメはオスばかりです。でも、これは不思議ではありません。生まれてくる子がオスになるかメスになるかが父親から与えられた染色体の種類によって決まる私たちとは違い、イシガメの場合、子の性別は卵の置かれた場所の温度で決まる、という性質を持っているからです。イシガメでは温度が低いとオス、高いとメスになります。わが家でカメが好んで産卵する場所はゴーヤーの根元で、水やりの影響であまり温度が上がらないのでしょう。

 このようなオスメスの決まり方を持つ動物は、カメ、ワニ、トカゲの中に多く見られますが、彼らに地球温暖化が悪影響を及ぼすことが心配されています。例えばイシガメを守るため、ペットとしての売買を禁止したりアライグマを駆除したりしたとしても、地面の温度がどんどん上がれば、メスばかり生まれてくることになってしまいます。これではその次の世代を残すことができません。

 保護活動が盛んなウミガメでも同じことです。こんなところにも、私たちが気候変動対策に真剣に取り組まなければならない理由があるのです。(京都女子大教授)

◆中田兼介 なかた・けんすけ 1967年大阪府生まれ。京都大大学院で博士号取得。著書に「クモのイト」「びっくり!おどろき!動物まるごと大図鑑」など。「図解 なんかへんな生きもの」を監修。