海岸沿いを通る国道178号。伊根町と他市を結ぶ唯一の国道だ(宮津市里波見)

海岸沿いを通る国道178号。伊根町と他市を結ぶ唯一の国道だ(宮津市里波見)

 2年前の西日本豪雨。京都府北部では多くの集落が孤立し、自治体全体の孤立も発生した。「孤立化」は、土砂崩れのようにそれ自体が人の命を奪うわけではない。しかし、東日本大震災のような大規模災害では、孤立が長期化し致命的な被害を招く危険がある。事前の準備で人的被害を大きく減らせるものだけに、行政の対策が求められる。

 2018年7月5日から降り続いた雨で、伊根町は国道178号など他市へ抜ける4本のルート全てが、崩土や雨量超過で通行止めとなり、町全体が孤立化した。

 しかし、町全体の孤立の場合、自治体内での人や物資の移動が可能なため、その被害や不便は集落単位の孤立の場合よりも小さい。町総務課によると、住民からの窮状を訴える声などもほとんどなかったという。

 一方で、当時の担当者は「電気が止まっていたら大変なことになっていた」と語る。町内で電線が切れた場合、孤立した状態では電力会社の特殊車両などが入ってこられず、停電が長期化する。また、悪天候でドクターヘリは飛べず、急病患者が発生した場合、町外の医療機関に運べず、治療に大きな影響が出た恐れがある。当時の担当者は「運良く、何も起こらなかった」と何度も口にした。

 西日本豪雨以降、孤立対策は同町の防災対策の主眼となった。投光器や発電機を各地区に配備したほか、防災行政無線に代わって今年4月から各世帯に導入された行政情報配信システム「いねばん」でも、災害時に住民らと双方向の情報共有ができるなど、対策を強化しているという。

 西日本豪雨では宮津市でも孤立地域があった。伊根町と隣接した同市の日ケ谷地区と養老地区の一部は、国道178号の雨量規制による通行止めによって宮津市街地方面へのルートが遮断され、伊根町と同様に孤立したが、市は「緊急車両は通れるため、孤立状態ではないと認識しており、府には報告していなかった」と話す。

 確かに雨量規制の場合、災害が発生していないため通行可能であり、救急車などの緊急車両の通行は柔軟に判断される場合もあるだろう。しかし、事実上の孤立が記録に残らないことは大きな問題だ。2009年の内閣府の調査では、孤立経験のある自治体では、全国平均と比べて衛星携帯電話の配備率が高いなど、集落孤立の対策が進められている。災害の記憶は薄れても、記録に残すことでその後の対策へとつながる。宮津市では西日本豪雨以降、具体的な孤立対策はなされておらず、災害の経験が生かされていないと感じた。

 内閣府によると、全国の集落の3割に孤立可能性があるという。食料や医薬品の備蓄などを住民に呼び掛けつつ、インフラ面の孤立対策を行っていく責任が行政にはある。