トーセの齋藤茂会長(京都市下京区・トーセ本社)

トーセの齋藤茂会長(京都市下京区・トーセ本社)

 新型コロナウイルスの感染拡大が京都、滋賀の経済に甚大な影響を及ぼしている。苦しむ事業者や労働者は危機をどう乗り越えていくべきか。「コロナショック」の現状と求められる対策を、トーセの齋藤茂会長に聞いた。

 ―新型コロナウイルスは、ゲーム業界にどう影響しましたか。
 「自宅で過ごす『巣ごもり』によって、ゲームの販売は総じて好調だった。代表格が任天堂のニンテンドースイッチ向け新作ソフト『あつまれ どうぶつの森(あつ森)』だろう。過去のゲームを楽しむ人や時間ができてゲームに復帰した人、初めて遊ぶ人などゲームの総人口が増えた。全年代でゲーム人口が伸びたのは、これまでなかった傾向だ」


 ―「あつ森」は大ヒットになりました。
 「外出抑制の状況下で発売となり、タイミングが絶妙だった。友人らとオンラインでつながり、緩い協力関係で無人島の開拓を進めるゲーム性もマッチした。当社も家庭用カラオケの利用が2倍以上に伸びた。かつては歌う時間帯からユーザーの中心は主婦層と推測できたが、今は時間が分散し、1日を通して歌われている」


 ―これからのゲーム開発にはどんな視点が求められるでしょう。
 「コロナで底上げされたゲーム人口をいかに維持するかが問われる。鍵は通信の高速化だ。『5G(第5世代移動通信システム)』ではダウンロードの所要時間が大幅に減り、私たちが目指すネットとリアルの融合が実現しやすい。医者がリモート(遠隔)手術をするロボットがあるが、この仕組みはゲームに応用できる。例えば建設機械やドローンをスマートフォンで操作することもでき、可能性は無限に広がる」


 ―ゲームの開発はテレワークが難しいと聞きます。
 「スマホゲームはパソコンを使うので在宅勤務も可能だが、ゲーム専用機が絡む開発は極秘で、場所を動かすのも難しい。非対面の打ち合わせでもニュアンスを明確に共有しないと、違う方向に開発が進み、時間やコストを浪費するリスクもある。ただ、当社は設備を持っていないので変化には対応しやすい。アイデア次第で新しい働き方や職場環境に挑戦していく」


 ―コロナ禍を受け、ゲームを含むエンターテインメント産業はどう変わりそうですか。
 「娯楽は心のサプリメント。人間である以上、生きるには衣食住とエンタメが必要だ。ゲーム業界ではコロナに関係なく、ネット経由で遊ぶクラウドゲームが主流になるのは間違いない。(定額動画配信サービスの)『ネットフリックス』もすごい勢いで利用が伸びていて、視聴者の意見を反映して展開が変わるドラマなどの企画を提案している」


 ―双方向型で筋書きが変わるドラマは、従来の概念を変えそうです。
 「『時が来た』と感じる。例えば物語の分岐点になるサスペンスドラマの場面で視聴者が推理すると、犯人や話の展開が変わるといった具合だ。これはゲームと同じで、展開に応じて複数のストーリーを用意するのは、われわれにとって至極簡単なシステム。映像はサーバーに蓄積され、ストリーミング再生であとはどう見るかだけだ。多くの映像が要るがネットフリックスは予算の桁が違うので、一緒にやりたい」