電話で情感たっぷりに小説を朗読するたきいみきさん(京都市下京区)

電話で情感たっぷりに小説を朗読するたきいみきさん(京都市下京区)

 新型コロナウイルスの感染拡大で劇場から足が遠のいている人に自宅にいながら演劇を楽しんでもらおうと、京都市の舞台女優が、小説や童話を電話で朗読する取り組みを始めた。感染防止のため外出をためらう人も多い中、電話一本でつながるサービスに演劇ファンだけでなく、子育て世代からも好評を得ている。

 京都市下京区の喫茶店の一室で、たきいみきさん(46)=東山区=が携帯電話を片手に朗読を始めた。この日の依頼は、中勘助の小説「鵜の話」。竜神に奪われた玉を取り返すため海へ身を投じる海女を情感たっぷりに演じ、依頼者を物語の世界に引き込んだ。

 朗読する作品は著作権の保護期間が切れていれば、何でも対応。依頼者が希望する作品を予約すると、指定の時間にたきいさんから電話がかかってくる。30分の利用時間内に朗読が終われば、会話を楽しむこともできる。

 7月17日から始め、これまでに17件を受けた。宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」や夏目漱石の「吾輩は猫である」といった名作のほか、子ども向けに絵本や教科書の朗読を依頼されたこともあったという。

 たきいさんは京都市に住みながら、静岡県舞台芸術センター(静岡市)が主宰する舞台に主に出演している。国内で新型コロナが広がり始めた2月は劇の公演のまっただ中。公演は途中で中止となり、5月に出演予定だった新作も取りやめとなった。

 舞台に上がれずもんもんとした日々を過ごす中、パリの国立劇場がオンラインで小説を朗読する取り組みを始めたことを知った。同センターに提案し、他の俳優仲間と一緒に4月から始めると、20日間で延べ130件の依頼があった。

 京都でも「朗読でんわ劇場」として、7月から単独で取り組みをスタートさせた。たきいさんは「演じさせてもらうことで俳優としての生き方ができる。空想の時間を楽しんでいただければ」と話す。

 実施期間は14~16日と21~23日の6日間。無料。申し込みは希望する日の前日までに、受け付けセンター070(8378)8657へ。