副大統領なんて、形だけの仕事だろう-。米ブッシュ政権の副大統領を務めたチェイニー氏を描いた2年前の政治風刺映画「バイス」で、同氏役がこう言い放つシーンがあった▼名誉職的で「米国一の閑職」と揶揄(やゆ)されてきたが、本物のチェイニー氏は政策のあらゆる分野を取り仕切り、「影の大統領」の異名もとった。副大統領の存在は今や、政権の性格を決定づけるともいえそうだ▼秋の大統領選で民主党の候補指名が確定しているバイデン氏も、そんな現実を熟慮したのだろう。副大統領候補に黒人女性のカマラ・ハリス上院議員を選んだ。「女性版オバマ」と評される鋭い弁舌が持ち味だ▼白人警官による黒人男性暴行死事件で人種間の緊張が高まる中、多様な人種や文化を尊重する象徴にもなりうる。だが、最大の注目点は、当選すれば1期目の最高齢大統領となるバイデン氏の「次」を狙える最右翼に立ったことではないか▼不測の事態に的確に対処できるかが問われよう。バイデン氏の存在感がかすみ、ハリス氏が実質的な「影の大統領候補」とからかわれるかもしれない▼副大統領候補は大統領候補のランニングメート(伴走者)と呼ばれ、二人三脚で選挙戦に挑む。共和党のトランプ-ペンス正副大統領も迎え撃つ。走り抜くのはどちらだろう。