新米が味わえる季節になった。米作りには出荷までに88の手間があるという。米の漢字を分解すれば「八十八」になることにかけ、先人たちは農家が大切に育てた米を粗末にしてはならないと戒めた。省力化が進んだとはいえ、自然相手の農業に苦労は多い▼新しい技術が今、農作業に難題をもたらしている。水田にまいている小さな粒状の「被覆肥料」が生態系に悪影響を及ぼすという。元凶は肥料を包むプラスチック製の「殻」だ▼米の収穫までに農家は何度も肥料をまく必要があったが、被覆肥料は殻の中の肥料成分が稲の成長に合わせて溶け出す。画期的である半面、殻が湖沼などに流れ出る恐れがある▼琵琶湖を抱える滋賀県は、農家の負担軽減だけでなく過剰な肥料の使用も抑えられるとして、利用を推奨してきた。使っていいのか悪いのか、農家にしてみれば悩みの種だろう▼昨今のプラスチックごみ問題である。使用をやめろというのは簡単だが、普及の背後には理由がある。農業ならば高齢化や後継者不足が挙げられる。みんなで知恵を集める時だ▼携帯電話一つで欲しい品が買える時代になった。製品を手にするまでの過程に、私たちはどこまで関心を持っているだろう。「八十八」の戒めは、消費する側の責任を問うているのかもしれない。