虐待を疑われている父親に、もっと積極的に、強く対応していたら、千葉県野田市の小学4年、栗原心愛(みあ)さんが死亡するようなことはなかったのでは。

 そんな悔しさが募る。

 傷害容疑で逮捕された父親と共謀した疑いで、母親も逮捕された。自宅浴室で父親が心愛さんに冷水を浴びせるなど暴行を続けていたのに、「止められなかった」と反省の供述をしているという。

 その母親も、父親からドメスティックバイオレンス(DV)を受けていたと言われる。父親の暴力が家庭内を支配していたことがうかがえる。

 児童相談所や学校、自治体など関係機関は、心愛さんからSOSが出ていたのに、なぜ守れなかったのか。不都合な事実にも目をつむらず検証すべきだ。特に父親への対応は十分だったのか、専門家を交えて検討する必要がある。

 厚生労働省が出している「子どもの虐待対応の手引き」に、「虐待を行った者に対する対応も今後重要となる」と書かれている。

 保護者は、過去に虐待を受けていたり、現実の困難に追い詰められていたりする。こうした内面の葛藤が、子どもへの暴力の背後にあるとの指摘がある。

 保護者への心理的アプローチや親権制限など個別対応が求められている。しかし、多くが虐待の事実を認めないのでやっかいだ。たいていが「しつけ」と認識しており、今回の事件でも父親は「しつけ」と言っている。

 先の手引きは、子どもの命を守るために、「保護者の意に反しても、介入していかなければならない」と説いている。関係機関はしっかり受け止めてほしい。

 父親の家族への暴行は、何度か問題になっていた。転居前の沖縄県糸満市では親族が通報、野田市では児相が面談し、心愛さんを一時保護している。

 ところが、一時保護の後、児相は家庭訪問を一度もしていない。市教委にいたっては、心愛さんが「お父さんにぼう力を受けています」と答えた学校アンケートを、当の父親に渡してしまっている。

 市教委は、父親から威圧されたことを理由にしている。なのに、心愛さんが置かれた危険な状況を、なぜ想像できなかったのか。

 虐待防止に向けて、関係機関が連携する仕組みはできているが、十分機能しない現場で悲劇が繰り返されている。専門家が足りないとも指摘されている。虐待を断ち切る決意が問われていよう。