いずれも適正を欠き、公共放送の信頼を揺るがせた責任は重い。

 かんぽ生命保険の不正販売問題を報じたNHKの番組を巡り、筋違いの抗議を執拗(しつよう)に重ねた日本郵政グループ、NHK会長を安易に厳重注意した経営委員会、事実上謝罪して「自主自律」を危うくしたNHKの3者だ。

 発端は昨年4月に放送された「クローズアップ現代+(プラス)」。郵便局員らを取材して、保険料の二重徴収など顧客に不利益な契約を強要していた実態を告発した。NHKが続編で追及しようとした矢先、郵政側が抗議。さらにNHK側の不十分な説明につけ込み、「揚げ足」を取るように経営委へも強く迫ったという。

 それぞれ反省すべき点が多いが、とりわけ抗議を繰り返した日本郵政グループは度し難い。

 告発番組を受け、まず内部調査を徹底すべきだった。社内の問題に目を向ける好機を逸し、不正な保険販売に手を打たず問題を拡大させてしまった。日本郵政社長自ら改めて番組を見直し、「今となっては全くその通り」と悔やんでも遅い。NHKにガバナンス(組織統治)体制の説明を求めたというが、その欠如を責められるべきは郵政側であろう。

 加えて、抗議の主役を務めたとみられる日本郵政副社長は総務省の元事務次官で、かつてNHKを所管する立場だった。今に至ってNHKを「暴力団と一緒」などと批判し、何ら反省していない態度には驚き、あきれる。

 片やNHK側にも問題がある。

 放送法は経営委員に個別番組の編集への関与を禁じている。経営委はNHK会長をガバナンス強化の趣旨で厳重注意したというが、郵政側が番組を巡り再三、抗議してきた経緯を踏まえれば、「番組に介入する意図は全くなかった」という言い訳は通用しない。しかも放送法が定める議事録の作成、公表さえ怠っていた。後ろめたかったからではないのか。

 また、公共放送のトップである会長も不正を追及すべき相手に自ら頭を下げた形といえる。報道・制作現場の士気低下は避けられない。言いがかりじみた要求を拒否しなかったのは、政権に近い組織から圧力を受け、忖度(そんたく)して過剰反応したといわれても反論できまい。

 受信料で運営されるNHKは、あらゆる圧力をはねのけ、自主自律を堅持すべき使命がある。大きく傷ついた信頼をいかに回復するのか。時の政権の意向や、外部の圧力に屈するようでは、視聴者の信頼は取り戻せない。