相次ぐ不祥事を受け、信頼回復を急ぐ法務省(東京・霞が関)

相次ぐ不祥事を受け、信頼回復を急ぐ法務省(東京・霞が関)

 刑事司法に対する国民の信頼が揺らいでいる。今年は検察幹部が賭けマージャンで辞職したのに続き、前法相の現職国会議員が公選法違反の罪で起訴されるなど前代未聞の不祥事が止まらない。不信のきっかけの一つは3月に大津地裁で言い渡された再審(裁判のやり直し)の無罪判決だった。法務省は信頼回復を急ぐが、道のりは険しい。

 「政府、検察庁、法務省に対する国民の信頼と期待は大きく損なわれた」。森雅子法相は7月、黒川弘務元東京高検検事長の賭けマージャン問題を受け、自らの主導で設置した「法務・検察行政刷新会議」の初会合で危機感をにじませた。

 検察幹部の定年を内閣や法相の判断で延長できる検察庁法改正案への抗議が急拡大した5月。その対象者で次期検察トップと目されていた黒川氏が、新聞記者らと緊急事態宣言中に賭けマージャンをしたとして辞職した。森法相は刷新会議で「検察官としてあるまじき行為。現場に大きな衝撃と失望を与えた」と改めて陳謝したが、実際の処分は懲戒よりも軽い訓告だった。刑事告発を受けた東京地検は賭博罪の成立を認めつつも、不起訴処分とした。

 6月には法務・検察行政を率いる法相を務めた衆院議員河井克行容疑者と妻の参院議員案里容疑者=いずれも自民党離党=が公選法違反(買収)の疑いで逮捕された。法相経験者の逮捕・起訴は戦後初とみられ、前法相が正当な選挙をゆがめたとして刑事責任を問われる異例の事態だ。

 とりわけ起訴を判断する権限をほぼ独占し、刑事裁判で立証責任を負う検察については、大津地裁の再審無罪判決以降、不信感が増幅している。地裁は、東近江市の湖東記念病院で2003年に患者を殺害したとして12年服役した元看護助手西山美香さん(40)の冤罪(えんざい)を認めた。そればかりか殺人事件自体が存在せず、大津地検と滋賀県警が描いた砂上の楼閣にすぎなかった可能性に言及した。

 裁判長は再審で浮き彫りとなった諸課題への自戒から「刑事司法の改善につなげることが大切だ」と現行制度の改革に向け一石を投じた。法務省は無罪判決を「厳粛に受け止める」とするが、再審に関する議論はその後も進んでいない。

 日弁連再審法改正に関する特別部会長の鴨志田祐美弁護士は、自身が携わる再審の「大崎事件」と湖東再審に共通する構造的な問題点として、再審段階における証拠の全面開示と、検察による不服申し立ての禁止が急務と訴える。

 ただ、刷新会議では再審法制化は取り上げられず、検察の綱紀粛正などが議題となる。会議運営の在り方を巡り、元裁判官の委員が8月の第2回会合までに辞任するなど早くも開催意義がかすむ中、鴨志田弁護士は「課題を検討したというアリバイづくりにさせないよう、権力に対する国民の不断の監視が必要だ」と厳しいまなざしを向ける。