いつ終わるか分からない闘いを続けるのはつらいことだ。75回目となる終戦の日を、先の見えないコロナ禍の中で迎えた▼戦争と感染症を同じように語るのはよくないとも言われる。それでも、つい重ねてしまう人はいるのではないか。日常は変わり、多くの人が苦境に陥っている。ちぐはぐな政府の対応には批判の声が上がった▼作家の片岡義男さんに「大変なときに生まれたね」と題するエッセーがある。新人の頃、話をした大先輩の故横溝正史さんから生まれた年を聞かれ、1939年と答えるとこう言われたそうだ▼いかに「大変」だったか、片岡さんは歴史年表の本から食に関する項目を拾って追体験する。戦争でさまざまなものが切符制に移行するが、切符はあっても品物が売っていない。敗戦前年には野草の積極的な食用まで奨励される▼ようは道ばたの草を食べることで、政府は「決戦料理」と命名した。片岡さんはこれが一番ひどいと憤り、国民にこんなことをする国は<おなじようなことをまたやるだろう>と警鐘を鳴らしている▼コロナの感染者数は世界で2千万人を超え、増加ペースは加速している。今がどんなときなのか、政府の認識がよく分からないことが不安を募らせる。国民に大変なことはさせない、という気概はあるだろうか。