8月10日 スヌーピーに教わった
 チャールズ・M・シュルツが1950年に連載開始した漫画「ピーナッツ」。私は70年代、これでサマースクール、ハロウィーン、タイプライター、硬式テニスなど、多くのハイカラ文化を学びました。版元がツル・コミック社のころ。一番のスターはビーグル犬のスヌーピー。あのマイペースぶりは猫みたいだなと、これは私見。本日は彼の誕生日です。最近は「完全版 ピーナッツ全集」の刊行も始まり、いまだ圧倒的な人気。

8月11日 ビッケにまた会える
 荒くれ男たちを手玉に取る天才少年ビッケを知ったのは1960年代末。スウェーデンの児童小説「小さなバイキング」です。痛快無比。学習研究社刊で、当時の同社は海外の埋もれた傑作を次々発掘、付録付き学習誌「科学」「学習」とともに、私には実に魅力的な出版社でした。70年代にはアニメ化、大人気になって、「ね!」と胸を張ったもの。時は流れて知らぬ子も多くなりましたが、間もなく新作アニメ映画でまた会える。

8月12日 ハイジのように
 わが娘がこんな子であってほしいと願うなら「アルプスの少女ハイジ」でしょうか。大自然を愛する明るい優しい女の子。19世紀スイスの作家ヨハンナ・スピリの原作を元に1974年テレビアニメ化。高畑勲、宮崎駿ら当時若き俊英たちが丹念に紡いだ全52話は、主題歌とともに忘れられない傑作となりました。余談ながらうちの娘は、お金持ちで病弱なクララの気持ちで見ているそう(そっちか!)。本日はハイジ(812)の日。

8月13日 子鹿のバンビは
 子鹿のバンビはかわいいな~♪。母が耳元で何度も歌ってくれていた三拍子の日本製の歌が、私の最初の「バンビ」体験でした。絵本や、色鮮やかでダイナミックなディズニー映画で確認したのはずっと後で、ウサギの「とんすけ」とともに確かにかわいい! と思った。米国での公開は1942年の本日。41年の「ダンボ」といい、世界大戦のさなかにこんな豪華で自由な作品が作られていたなんて、米国の力に心底驚かされます。

8月14日 ニコラに癒やされて
 小学生のニコラたちがろくでもない騒動を巻き起こすユーモア小説「プチ・ニコラ」は1960年にフランスで刊行、ロングセラーとなりました。私は大学で仏語の勉強中に、シニカルでエスプリあるこの本に出会い、大いに笑って癒やされた。語学は身に付かなかったものの、憧れの国の生活習慣に触れられました。今夏装い新たに全5巻が順次発売に。本日は漫画「アステリックス」でも知られる作者ルネ・ゴシニの誕生日です。

8月15日 ドロシーと虹
 少女ドロシーの奇妙な旅を描いた「オズの魔法使い」はファンタジーの古典。私の小学校ではドロシー派とアリス派に分かれたものです。竜巻、トウモロコシ畑、エメラルドの都など、米国ならではの雄大な背景が特徴で、映画版はジュディ・ガーランドが演じて大ヒット。1939年の今日は本作がハリウッドで初上映された記念日です。先日も比叡山にかかった美しい虹を見て、主題歌「虹の彼方(かなた)に」をつい口ずさみました。

8月16日 ケンケン、いいよね
 主人を裏切る、スヌーピー以上のわがまま犬がケンケン。1970年に日本でも放送されたアニメ「チキチキマシン猛レース」の悪玉・ブラック魔王の手下です。手がけたのは「トムとジェリー」「ドラ猫大将」の製作会社。当時の米国アニメはリッチで軽妙、ナンセンス。それらを日本用に、恐れず大胆に翻案、脚色したわが国のテレビマンの手際には大拍手。ケンケンの本当の名は「マトリー」ですって。何か違う!

 

~すずさん、気を付けて!~

 

<文 澤田康彦 絵・題字 小池アミイゴ>

 スヌーピーの誕生日やハイジの日などがあった週、「いとしいあの子」を回想する7日間でしたが、さらにもう1人。近年出会った「すずさん」も挙げておきたいと思います。

 こうの史代の漫画「この世界の片隅に」の主人公。4年前には映画化され大ヒットしました。声の出演、女優・のん(旧・能年玲奈)が、アニメーションの語源通り、永遠の命を吹き込んだと言えましょう。

 戦時中、広島市から隣の軍港・呉市に嫁いだ18歳。絵が好きで、おっとりした、どこにでもいそうな女性の暮らしを描いた物語です。「ありゃあ」「困ったねえ」が口癖、愛らしいすずさんのどじな行状を笑い、周囲の人間模様、当時の生活を学びつつ、次第に男たちが消え、敗色が濃くなる母国の姿に胸が締め付けられる。相次ぐ空襲の先に待ち受けるのは8月6日。すずさん、気を付けて!

 ぼくがいた雑誌「暮しの手帖」は、2017年春、この映画の拡大公開の波と呼応し合うかのように、「戦中・戦後の暮しの記録」と題した戦争体験記を募りました。敗戦から既に70余年がたった現在、どれくらいの人が応じてくださるか心もとなく待っていたのですが、秋には連日のように手書き原稿、絵や写真が届きました。語り手は無論70代以上で、戦時は子ども。幼い目で見、小さな体で体感した戦争のかけら、片隅が集まった熱い厚い1冊になりました。投稿の数だけの悲惨な経験、涙の味があった。戦時中とて、恋も笑いも幸福もあり、それはかけがえのないものだった。投稿者は女性が多く、すなわちそれぞれがリアルすずさんなのでした。

 応募作から共通して感じたメッセージは2点。「戦争は二度と繰り返してはならない」。そして「国はあなたを守ってはくれない」。人類史をひもとけば、真実でしょう。だからこそ、いとしいあの子をずっと忘れず伝えていかねばと考えます。SNSを使った戦争体験を募るNHKの番組企画「#あちこちのすずさん」も3年目。とても良い試みです。

 余談ながら、今のコロナ禍による統制、混乱はある種、戦時下のようにも感じられます。社会の問題があらわに見える。国は、片隅にいるぼくらを守ってくれていると思いますか? 気を付けましょう。(編集者)

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澤田康彦 さわだ・やすひこ 1957年生まれ。編集者・エッセイスト
小池アミイゴ こいけ・あみいご 1962年生まれ。イラストレーター