昨年の「びわ湖大花火大会」で打ち上げた花火。斜め方向に打つ技法が使われている(大津市)=國友銃砲火薬店提供

昨年の「びわ湖大花火大会」で打ち上げた花火。斜め方向に打つ技法が使われている(大津市)=國友銃砲火薬店提供

花火筒を点検する上埜さん。斜めに打つ場合、50本を枠ごと傾ける(南丹市八木町)

花火筒を点検する上埜さん。斜めに打つ場合、50本を枠ごと傾ける(南丹市八木町)

 大津市で昨夏、開催された「びわ湖大花火大会」の終盤、夜空に大音量の音楽が突然鳴り響き、曲に合わせて赤や緑色の光が縦横に飛び交った。火薬のにおいが漂う中、何千、何万もの視線が闇一面に次々と咲く炎の芸術に注がれた。

 南丹市八木町と京都市右京区京北の境界付近に広がる暗いスギ林。細い山道を抜けると、秘密基地のような建物が現れる。西日本を中心に花火大会の打ち上げや演出を手掛ける「國友銃砲火薬店」(下京区)の倉庫では、花火筒や国内外から購入した花火玉が厳重に保管されている。

 「いかに感動させられる花火にできるか。量より質を追求している」。同社の上埜昌紀煙火部長(48)は説明する。近年は花火に音楽をシンクロさせた演出が人気となり、芸術性がより求められる。光と音の共演に欠かせないのがあらゆる角度に打ち上げる「斜め打ち」の技法だ。

 斜めに打ち上げると、発射時の衝撃による振動で筒が安定しない安全面の課題があった。可能にしたのは筒を25~50本まとめて傾ける工夫だ。角度を付けた型枠に筒を固定すると、自重によりぶれを防ぐことができる。

 当日の風向きや風速に応じた角度の微調整も欠かせない。点火は独自のコンピューターシステムを使い、100分の1秒単位で制御する。上空を彩る芸術は、地上での緻密な作業によって生み出されている。

 同社のルーツは戦国時代に活躍した近江・長浜の鉄砲鍛冶集団。明治に京都に進出、1901年に銃砲・火薬を扱う店として創業した。鉄砲の技術を援用し、戦後から花火の打ち上げを手掛ける。

 7月末から8月中旬までが最盛期だが、今年は新型コロナウイルスの影響で軒並み花火大会は中止に。上埜さんは肩を落とす一方、「ドローンを使って上から花火を落とせないか構想している。誰も見たことがない花火を考えたい」と探究心は消えていない。