原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向けた文献調査に、北海道寿都町(すっつちょう)が応募を検討している。

 文献調査を受け入れると、2年間で最高約20億円の交付金が支給される。同町は人口減少が進んでおり、財政維持の一手としてとらえているようだ。

 前にも同じようなことが繰り返されている。

 2005年に滋賀県余呉町(合併後長浜市)の町長が応募検討を明らかにしたが、多くの住民の反対で断念している。高知県東洋町では文献調査が初めて認可されたが、町長選で調査撤回を訴えた候補が当選して頓挫した。

 これまで応募の動きがあったのは、過疎の小さな自治体だ。年間予算と変わらない多額の交付金を見込んでのことだが、地元の分断を招いて終わっている。

 こうした交付金で誘導するような手法は見直すべきだ。財政難に苦しむ自治体には、現実の地域課題に対応した交付金や政策で支援するのが筋ではないか。

 日本学術会議は政府の原子力委員会の要請を受け、12年に核ごみ処分について回答書を出している。この中で「交付金などの金銭的便益提供を中心的な政策手段とするのは適切ではない」として、立地選定の手続きを改善する必要があると提言した。

 経済的な受益への関心が優越すれば、安全性の吟味が妥協的になりかねない、とも指摘している。

 しかし、07年度に増額された文献調査の交付金はそのままだ。文献調査は2年間で、過去に起きた地震の有無などを歴史的文献で調べる。それだけで交付金は支給される。

 続く第2段階の概要調査は4年間にボーリング調査などで岩石や地下水を分析、最大70億円が支給される。さらに精密調査があり、処分場決定まで約20年を要する。

 その間に自治体はいつでも辞退でき、交付金を返上しなくてもいいことになっている。といっても、実際には一度動きだした事業を止めるのは簡単ではないだろう。

 原発立地の自治体が交付金依存の財政体質から抜けられず、廃炉後に不安を抱えている。こうした実情からも目を背けるわけにはいかない。

 増え続ける核ごみの処分をどうするか。電気の恩恵を享受する全ての人が向き合うべき課題なのに、一部の地域に押しつけようとしているのではないか。難しくとも、処分地選定のあり方を改めて議論する必要がある。