「人間は、いつの時代も、同じことを繰り返してしまう。ゲルニカのような残酷さと、あらがい続けなければいけないと現在進行形で考えている」と話す劇作家の長田育恵(左)と、主演の上白石萌歌=撮影・源賀津己

「人間は、いつの時代も、同じことを繰り返してしまう。ゲルニカのような残酷さと、あらがい続けなければいけないと現在進行形で考えている」と話す劇作家の長田育恵(左)と、主演の上白石萌歌=撮影・源賀津己

 画家ピカソの代表作「ゲルニカ」(1937年作)。スペイン内戦中の同年4月、スペイン北部ゲルニカの町をナチス空軍が無差別爆撃したのを受けて、惨禍を象徴的に描いた。この空爆に至る市井の人々のドラマを描く栗山民也(67)演出、上白石萌歌(20)主演の新作舞台「ゲルニカ」が10月、京都で上演される。劇作の長田育恵(43)は「ゲルニカに生きた人たちと、今の自分たちは不思議と似ている。シンクロを感じた」と、コロナ禍の時代を重ね合わせて書いた。

 「写実的ではないのに、人の叫びが聞こえてくる。動きを止めてしまいそうな圧、恐怖を感じる」。上白石は、母校である故郷・鹿児島の中学校に飾っていた「ゲルニカ」の複製を思い起こす。

 「ゲルニカ」の舞台化を長年考えていた栗山から脚本の依頼を受けた長田は、ゲルニカに赴くなど、1年以上取材を重ねた。

 ピカソは大量のデッサンを重ねてゲルニカを作った。最初は怒りにまかせて残虐さや生々しい思いを表したが、どんどん淘汰(とうた)され、シンプルになって今の絵になった。長田は「怒りにまかせた絵は、その時は力を持っても、時を渡ることはできない。憎しみに飲み込まれずに、どうやってあらがっていくか―。それがテーマだと感じた」

 物語は、ゲルニカの元領主の娘として、不自由なく生きてきたサラ(上白石)が主人公。台頭するファシズムと人民戦線軍の戦いが激化する中、戦場カメラマン(勝地涼)や女性記者(早霧せいな)らとふれ合い、一人の兵士(中山優馬)と恋仲になるが…。

 長田は「ふと感じた違和感を何も解消しないで選択を重ねたり、大きな流れの中でブレーキに気付かないふりをしたり、今の日本にも通じる部分は多い」と語る。コロナ禍の中、「まさか、まさかが続いたが、劇中の人たちもまさかを繰り返す。今の私たちを俯瞰(ふかん)すると、何かが始まっているのかもしれない。ゲルニカという器を借りて、今を入れ込んで書いた」

 出演者が未定の段階から、男性を主人公にしたパターンなど複数のあらすじを用意。上白石の主演が決まると、当て書きする形で、少女が成長していく物語としても描き込んだ。悲劇の中に、自由を求め続ける希望をにじませる。

 上白石は「1930年代という昔のことを演じるのですが、今現在この世の中の空気を知っている私たちが、この状況下でしか伝えられないことがある」。今春以降、舞台の中止・延期が相次いだだけに、「今まで以上に舞台を通して伝えていきたい思いが強まっています」。

 キムラ緑子(同志社女子大出)らも出演する。

 10月9~11日、京都市下京区のJR京都駅ビルの京都劇場で。計4回公演。9800円。8月30日発売。詳細はキョードー0570(200)888=敬称略