地元住民から奉納された「立花」(2019年8月19日、亀岡市大井町・大井神社)

地元住民から奉納された「立花」(2019年8月19日、亀岡市大井町・大井神社)

 京都府亀岡市の大井神社の氏子たちが毎年8月19日に「立花(りっか)」を奉納する伝統行事が、新型コロナウイルス感染拡大防止のため、今年は中止となった。地域住民が立花作りを口伝で伝える府無形民俗文化財だが、密状態が避けられず開催を見送った。関係者らは来年の再開へ気持ちを切り替えている。

 立花は室町時代の座敷飾りとして発展した立て花や仏に備える仏花に由来し、華道成立前の姿をとどめるという。摘んだ松葉をきりで穴を空けた枝に無数に挿し、その枝を古木に取り付けるなどして、本物の松のように仕立てる。同神社では遅くとも江戸時代初期には氏子の奉納が始まり、今も6地区が制作・奉納している。

 30年以上関わる大井垣内地区の山田一徳さん(53)によると、当日は午前7時に約10人で松を切り出し、約8時間かけ制作してきた。薄端(うすばた)と呼ばれる花器に骨格となる古木を立てる方法や、枝ぶりの整え方などは全て地域の先輩から口伝で教わってきた。初の中止に「できれば奉納したかった」と惜しむ。

 稲本高士宮司(78)は「知る限りでは過去に中止したことはないが、感染を拡大させるわけにはいかなかった」としている。神社では同日の盆踊りも中止となったほか、10月16日の大井祭も神事のみとし、みこしや騎馬行列などは中止する。